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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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26 2007 / 01
「今夜はどうやって・・・あっ、ごめん。」
トゥルルルル・トゥルルルル・トゥルルルル・・
カメラを置いた高梨さんはテーブルの上にある携帯電話を取り上げました。
「高梨です。 ありがとうございます。これから迎えにいきます。あぁ、もう暗くなってきましたから、車で。はい、お手数をお掛けしました。」
「ブリーダーさん?」
「ああ、ちょっと迎えに行ってくるよ。白雪が帰りたがって鳴いているらしい。あの家にいるとご機嫌なんだがな、今夜は珍しいことだ。」
「それじゃ、いってらしてくださいな。お戻りになったらお夕食でいいですか?」
「楽しみにしているよ。」
携帯電話とさきほどの栗きんとんの包みだけを手に、コートを羽織られます。
料理の途中、わたくしは台所から離れる事ができませんでした。
「ごめんなさい、ここでお見送りで。」
「ははは、行ってくるよ。」
たん・・ばたん・・・ 扉のしまる音のあと、パジェロのオールティーレンのタイヤが地面をくじる音がいたしました。
あと30分ほどでしょうか。
とりあえず、今夜の夕餉の支度を急ぐ事にいたしました。


じゃっ・・・・きぃっ・・・ わん・わん・・・わ・わん・・・
タイヤの音、サイドブレーキを引いた音に続いて白雪の鳴き声がしました。
テーブルの上には丁度お鍋とおつまみの用意が出来たところです。
わん・わん・・わん・・・
カラカラ・・・・ 
白雪の声がベランダのあたりでしたと同時にガラス戸がほんの少し、引き開けられたのです。
「祥子さん、悪い。風呂場からぞうきんを取って来てくれないか。」
高梨さんがベランダから顔を覗かせます。
「はい。どれでもいいのかしら。」
「ああ、濡れたのがいいな。」
「ちょっと待ってくださいね。」
キッチンからすぐの扉を開けて、出てすぐ右手にある浴室にかけてあるぞうきんを2枚取りました。2枚とも冬の乾燥する季節です、カラカラに乾いておりました。
わたくしはそのままキッチンに取って返し、シンクの暖かな湯でぞうきんを絞ったのです。
「お待たせしました。」
もう一度ガラス戸を開けたベランダでは、白雪が高梨さんにまるで甘える様にじゃれていました。
「ああ、ありがとう。ほら白雪、足を拭くぞ。」
あぅぅ〜ん 白雪はまるでお手をするように高梨さんの前に座ると右前脚を出すのです。高梨さんはその足先をぞうきんで拭いてゆきます。
「きれいにしてきたばかりなのに。」
丁度ブリーダーさんからグルーミングを受けてきた白雪は、初対面のときよりも数段男前になっていました。
真っ白で柔らかな毛は室内から洩れる明かりに光沢さえ感じるほどでした。冬毛に生え変わるために根元に残っていた夏毛の名残は全て梳られて、ほんの少しですがスマートになったみたいです。
「流石にこの時期は、眠る時は家に入れてやらないと可哀想だからね。いまも車からまっすぐベランダに上げたんだが、ほら、土が付いている。」
「ふふふ、もこもこですもの仕方ないわね、白雪。素敵になったわね。」
わん♪・・・
言葉がわかるかの様に、白雪が答えます。
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24 2007 / 01
「お口に合うといいんですけれど。」
「そう伝えておくよ。」
「あっ、そうでした。今夜なんですがお鍋にしようと思うんです。締めは年越し蕎麦を召し上がっていただくつもりなんですが、お鍋はたらちりと鴨鍋とどちらがよろしいですか?」
お料理のはじめに、土鍋には昆布出汁を取る準備をしてありました。
他のお料理用の出汁は、別の大きな寸胴鍋で昆布と鰹の合わせ出汁を2本分やはり最初に取っておきました。贅沢な作り方ですが、お料理の基本です。短時間に数種類の献立を作る為には、このやり方が一番効率的なのです。
「ほう、どちらもうまそうだな。鴨鍋の出汁で最後蕎麦をたぐるのも悪くないが・・・たらちりもいいな。」
「白子を買っておいていただいているので、新鮮なうちに召し上がっていただいたらいいかと思って。七輪で焼いてとも思ったのですが、お鍋のほうが美味しそうでしょう。」
「ん、それはいい。」
「よかったわ。それで準備させていただきますね。お蕎麦はざるにいたしますから、後でべつに召し上がってくださいな。」

わたくしは、足元から泥付きの長ねぎを数本取り上げました。
深谷ねぎの系統でしょうか、太くてしっかりと身の入った緑の部分も柔らかな長ねぎです。足元に段ボール箱を利用して作っておいたゴミ箱の上で長ねぎの一番上の皮を1枚だけ剥いてゆきます。
泥を纏った1枚をはいだ下には輝くばかりの白い肌が表れます。
台所から包丁を取って、逆さ剥きにした皮の根元を切り落としました。
「野菜は足りているかな?」
「ええ、充分です。これってほとんどこの土地のものなのでしょう。」
「そうだよ。」
シンクの水で長ねぎを洗います。冷たい水ですが・・・お湯で洗うとなんとなく野菜の香りが飛んでしまうような気がして、必ず水を使うのはわたくしの思い込みかもしれません。
サクッ・サクッ・サクッ・・・・ちり鍋用に、長ねぎを斜め削ぎ切りにしてゆきます。
「ほら。香りが良くて、とっても精があって。いいお野菜ばかり。」
「遠くの名産より、近くの採れたてのほうが旨いと信じてるんでね。」
「ふふふ、正解ね。」

まな板を洗って、小鍋にお湯を沸かすと今度は食用菊のパックを取り出しました。
「これも今夜のおかずかな。」
「ええ。高梨さんは良く召し上がるの?」
「いや、実は裏の家からの貰い物だったんだ。昨日いただいたが、どうしていいかわからないからそのままにしておいた。」
カメラを構えてシャッターを押しながら、高梨さんの質問は続きます。
単焦点レンズで・・・同じ室内ですからあまり離れることもなく・・次々と切られるシャッター音を、わたくしは次第に意識しなくなっておりました。
「ふふふ、かきのもとの作り方なんてあまり知られていませんものね。」
「かきのもと?」
「ええ、この食用菊のことです。新潟の方の呼び方なのかしら。母がそう言っていたので、なんのこだわりもなくずっとそう呼んでいました。」
花の首から摘まれている菊のはなびらをきれいに顎から外してゆきます。ざるの中にはあっという間に、山のような薄紫の花弁がつみかさなってゆきました。
「どうやって食べるものなんだ?」
「そうですね、たとえばお醤油でといた生卵に付けて召し上がる方もいらっしゃいますよ。」
23 2007 / 01
「ああ、うちの母はここらへんのものは買ってきていたみたいだからな。」
栗を2/3ほど、きんとんの中に混ぜ込みます。
「あまり甘いものはお好きじゃありませんでしたか?」
「よくそう言われるが、実は好きなんだ。でもさすがにこの鍋の中身は二人分には多そうだな。」
「ふふふ、そうかもしれませんね。」
煮たのはさつまいも1本分でした。でも、立派な大きさのそのお芋からは結構な量の栗きんとんが出来上がっていたのです。
「なにか器に半分ほど詰めてくれないか?」
「はい、構いませんけれど。どうなさるの。」
「白雪のグルーミングのお礼に持って行こう。」
「えっ、他所のお家に。」
「いや、さっき白雪を預かってくれた奥さんが、今年はきんとんを買い損なったっていう話をしていたからな。こんなに旨そうなものなら喜ぶだろう。」
「味見をしてくださらない?」
まだ一度もお会いしたことのない方の家に・・・・。突然の高梨さんの申し出にわたくしはびっくりいたしました。どんな方にも好まれるお味だと自惚れるほどには、腕があるわけではないんですもの。
「祥子が確かめた味なんだろう。」
「ええ。」
「だったらそれでいい。頼む。」

確かにこのままの量を二人で食べきれるかといえば・・・難しいかもしれません。
「わかりました。ちょっと待っていてください。」
わたくしは、背後にある食器棚から白地の深い小鉢を2つ取り出しました。
器を濯いで・・・そこに、いま作りたてのきんとんを盛りつけたのです。
中高になるようにこんもりと、続いて混ぜ込むことのなかった栗をアクセントになるように表面に数個並べました。
それから、薄紅に色づけをした花びら型の百合根をその上に散らしていったのです。
「ほお、ここに使うためのものだったんだね。」
「ええ、ちょっとした添え物なだけですが。」
「いやいいよ。まるで和菓子のようだ。」
カシャ・・ カシャ・・・
今度は調理台の上に二つ並んだ器までフィルムに収めるのです。もう、交換したフィルムは4本目になります。
「恥ずかしいわ、もう。」
「祥子の手は綺麗だね。爪はきちんと摘まれているし、マニキュアをしているわけでもない。女性としては少し大きいくらいだろう。」
「ええ、もう・・・手のアップなんて。」
そうでした。わたくしは身長も女性としては高い方でしたが、同時に手足もすんなりと大きかったのです。若い頃は、時として男性よりも大きな手がコンプレックスだったこともありました。
カシャ・・ カシャ・・・
「いや、こういっては失礼だがね、なまじなモデルの手より数段若くて女らしい。関節がごつごつと主張することもない。カメラから見ると指に関節なんかないんじゃないかと思うくらいだ。こんなにまめに水仕事をしているのに、荒れてもいない。冷たい水を通すとすっと白くなって・・それから指先だけが紅色に染まる。そしてね、佇まいが本当に綺麗なんだ。いつも指先まで神経が通っている様に、綺麗な型になっている。」
器の1つにラップをし引き出しにあった小布で包んだものを高梨さんに差し出したのです。
22 2007 / 01
「嬉しいよ、そんなに僕のことを心配してくれて。ありがとう。」
ちゅっ・・・ タオルに添えたわたくしの手を振りほどくこともなく、高梨さんは長身をかがめる様にして、頬に1つキスをしてくださったのです。
「あの・・白雪はどうなさったの。」
今日こちらに来てからの、高梨さんの甘やかな仕草にわたくしはほんの少し戸惑いながら、高梨さんの手を包んだタオルを解きました。そして、このままキッチンでの情事が始まってしまわないようにとさりげなく話題を変えたのです。
「ああ、白雪の兄弟のいる家で遊んでるよ。」
カシャ・・
高梨さんはさっそくカメラを手にすると、ピンクに染まった百合根のようなわたくしの耳朶にレンズを向けたのです。
わたくしはカメラを見る事なく、黄金色に煮上がったさつまいもの裏ごしをはじめました。
「サモエドのブリーダーの方がお近くにお住まいなんですか?」
「そうなんだ。丁度道の反対側にある家なんだけどね。僕がここを空けることが多いからそういう時は白雪を預かってもらっている。」
「よかったわ。」
カシャ・・
高梨さんを見上げた瞬間、シャッターが押されました。
「良かった? いま、白雪がいないことがかい。」
「もう、何をおっしゃってるの。違います。高梨さんは一年の半分くらいはこちらにいらっしゃらないでしょう。その間白雪はどうしているのかと、思っていたんです。ブリーダーの方のところで、兄弟一緒に過ごしていれば寂しくなくてよかったわ。」
「ははは、なんだ今僕と二人きりになれてよかったっていう意味じゃなかったわけだ。」
「しりません。」
まるで、夫婦二人きりの昼下がりにやんちゃな息子が友達の家に遊びに行っていて・・・だからこうして甘い時間が過ごせるだろう、高梨さんの言葉にはそんなニュアンスが含まれていたのです。
いつものヒルズの高梨さんのお部屋なら、このまま全てを放り出して甘えても、美味しいディナーを堪能する手段はいくらでもあります。
でも、いまここで手を止めたらふたりのこれから3日間のお夕食は台無しになってしまいます。
それを解っていらしてこんな悪戯を仕掛けられているのにわたくしは気づいていました。

「白雪をお迎えに行かれるんでしょう。」
「ああ、済めば電話が来る事になっている。」
「済めば?」
「ああ、グルーミングしてくれるそうだ。サモエドは防寒のために毛が密に生えているからね。風邪をひかないように暖かな部屋で完全に乾かしたら電話を貰う事にしてある。」
手元のボウルには、裏ごしされたきんとんがふんわりと黄金色の山を作っておりました。木杓子でかき混ぜて、ほんの少しだけ滑らかさを出すために栗の蜜煮の蜜を加えます。
「栗きんとんを作るプロセスを初めて見たな。」
「そうでしたか。」
21 2007 / 01
「1つだけお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「ああ。」
「囲炉裏の煮物を見て頂けませんか?お出しが上に乗せた昆布に掛かっていなかったら、もう火から下ろしていただきたいんですの。」
おやすい御用だよ、そういって囲炉裏に近寄られます。
大柄な高梨さんだと本当に数歩の距離でした。
お願いをしたまま、わたくしはくちなしの実で美しく黄色に染まった栗きんとんのためのサツマイモの煮え具合を竹串で確かめておりました。すっと通った竹串を引き抜いて唇に当てて火の通りを確認します。
「これは、旨そうだな。」
「なんていうことのないお野菜の焚き合わせです。今日はお時間がなかったので、いくつかは一緒煮にしたんです。お出しの具合はいかがですか?」
お鍋の中には里芋・蓮根・人参が入っていました。筍と手綱こんにゃくは別のお出しですでに煮含めてありました。
「もういいころだろう。下げればいいのかな。」
「はい、こちらにお持ちいただけますか?」
「おう。」
そうおっしゃるなり、高梨さんは鍋の蓋を閉じてそのまま鍋の手を掴みました。

いくら手元に火が当たっていないとはいえ、長時間煮続けていたお鍋です。
「あぁっ・・・そのまま持ったらだめ、熱いわ。」
「ははは、これくらいは大丈夫だよ。」
その言葉通り、高梨さんは大振りな両手鍋を持ち上げたのです。
熱いそぶりも見せません。
「どこに置けばいいのかな?」
「そこの隅にお願い出来ますか。」
先ほどの酢蓮の場所とは少し離れたところに、煮物鍋を置くための厚めに新聞紙を敷いたコーナーを作っておきました。
すでにそこにある3つほどのお鍋のその並びに、高梨さんは焚き合わせの鍋を並べたのです。

「ありがとうございます。ね、手を見せて。」
わたくしは、高梨さんの手を取って冷たい水で絞ったタオルで指先を包んだのです。
「大丈夫だ。手の皮はしっかり厚いからな。」
「もう、シャッターを押す大事な手を火傷なんかなさったら・・・困ります。」
見た感じ、火傷はしていないようでした。
でも、わたくしよりも幾分高い高梨さんの体温のせいでしょうか。指先を包んだ冷たいタオルは瞬く間に次第に人肌へと変わってゆくのです。
「本当に大丈夫だよ。祥子は、心配性だな。」
「だって・・・。」
「いまの祥子の顔を写真に撮っておきたかったよ。」
「ん・・いじわる。」
良く熱い食べ物が苦手な方を猫舌といいます。
わたくしは、猫手でした。
主婦として十数年台所仕事をこなしていても、指先の感覚は鈍くなる事などなくて、いつもお鍋の手を取ろうとしてアチっ・・と声を上げてしまったいたのです。
きっと先ほどのお鍋も、わたくしの手ではあんな風に持てなかったでしょう。
自分だけの感覚で、心配しすぎてしまったことが急に恥ずかしくなって、わたくしは高梨さんの前で拗ねてみせるしかありませんでした。
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