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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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20 2006 / 07
「この後はどうなさるんですか?」 視線の先の庭園はすっかり宵闇に沈んでおりました。ところどころに設置された灯籠が、昼間見た回遊路をやさしく照らしているようです。
「お席を変えられるのでしたら、バーカウンターを予約いたしますが」 流石に気が利くところは、田口さんの後輩です。
「いえ、せっかくなので蛍のお庭を楽しませていただきますわ。」
「そうですね。なかなか見事ですから、ぜひいらしてください。私達従業員はつい見そびれていて・・・紺屋の白袴って感じですかね。」 どうぞ、ごゆっくりなさってください 呼びにきたサービスチーフに耳打ちされて、杉山さんはキッチンに戻って行かれました。
フレンチ・ローストの珈琲がコースの最後を引き締めてくれました。

 
「さぁ、蛍を観に行きましょう。」 田口さんがわたくしの椅子を引いてくださいます。
そうでした。蛍の仄かな明かりが美しく見える時間まで・・・と、お食事を誘っていただいていたのでした。
「田口さん、あのお宅はよろしいんですか。せっかくのお休みですのに、ご家族がお待ちになってらっしゃるんじゃありませんの?」 2万坪と言われる庭園の一部とはいえこれから散歩をしようと言うのです。まだ1時間ほどはお時間をいただくことになるでしょう。
「美貴様から何もお聞きではないんですか?」 実際のところ美貴さん達と田口さんがどれほど親しいのかは、わたくしにはわかりません。ただ、あの場に・・・とてもプライベートなはずの淫媚な場に招き入れたのですから、秘密を共有することを許せるほどの関係だということくらいは感じられました。
「ええ」
「私は独りなんですよ。5年前に離婚しましてね。いまは気ままな一人暮らしです。」
「そうでしたの。申し訳ありません、立ち入ったことをお聞きして。」
「いえいえ、これで安心して蛍の庭へエスコートさせてくださいますか?」
「ええ、それでしたら安心して、ご一緒させていただきますわ。」
わたくしは差し出された田口さんの左腕に軽く手を添えると、お庭へ向かう扉の外へと歩き出していたのです。

 
庭園に向かう扉を開けたとたん、湿度の高い空気がむっと押し寄せて参りました。お食事をしていた1時間ほどの間に、天候が少しかわっていたのかもしれません。雨が落ちてくる気配はありませんでしたが、月の姿も全く見えなくなっていたのです。
星もない真っ暗な空は、庭園内の足許を照らす灯りさえ薄く霞ませているようです。
気をつけて、ゆっくりと歩みを進めてくださる田口さんのコットン・ジャケットにわたくしは腕を絡めておりました。
「あっ・・ほたる・・・」 眼の前をほのかに緑がかった光が・・・1つよぎりました。わたくしは、思わず田口さんの袖を引いてしまったのです。
「どれ?」 最初の蛍火は、田口さんの視線が捉える前にふっと消えてしまいます。
「・・っ・・また・・・」 一つ・・またひとつ。文字通りの蛍光色の筆が雅な仮名文字を描くかの様に動くと・・・ふっと消えてゆくのです。
「きれい・・・」 ため息のように漏らした一言に、田口さんはやさしく微笑んでくださったのです。
「三重塔から回ろうと思いましたが、気が変わりました。池のほとりの方から歩きましょう。」 分岐した回遊路を、田口さんはまっすぐに歩き出したのです。
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19 2006 / 07
「お皿をお下げしてもよろしいでしょうか。」 サービスの方の声にわたくしはピクンと身を震わせてしまいました。うやうやしく礼をして田口さんのお皿を下げる姿に、わたくしは手を止めたままだった最後のお肉を・・・口にしたのです。
「ごちそうさまでした。とても美味しいお料理でしたわ。」 斜めに揃えられたカトラリーを見て、わたくしのお皿にもサービスの方が手を伸ばされたのです。
窓に向かってしつらえられた二人きりのテーブルは、周りの席に他のお客様がいらしても閉じられた空間をつくっておりました。田口さんのつくる濃密な空気が、わたくしを少し息苦しく・・・深く酔わせていたのです。
会話の内容も二人の間の緊張もご存知ないサービス・スタッフが、淫媚な結界を破ってくれていました。
綺麗に片付けられたテーブルに、今夜のデザートが届けられました。
「恐れ入ります。田口様、いま、シェフがご挨拶にまいります。」 サービス・チーフはトレイを手にそう言い置いて下がって行かれました。
 
「デザートも繊細ね。パティシエも田口さんのご存知の方?」 デザートはフルーツのタルトに、まるで薔薇の花のように飴細工をあしらったものでした。柔らかな香りがをテーブルを華やぎに包みます。
「いえ、パティシエは最近こちらに来た女性だそうですよ。今日は逢えなかったんですが、このデザートを見れば人気が高いことはわかりますよ。」
「いらっしゃいませ。先輩がこんなに素敵な女性とご一緒だとは思いませんでした。シェフの杉山です。よろしくお願いします。」 田口さんがデザートのことを語り終える前に噂のシェフがいらっしゃいました。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったですわ。」 田口さんとは正反対の・・・細身なのにしなやかな強さを感じさせる男性でした。黙っていたらただの優男に見えかねないのですが、そのきっぱりとした口調はこのレストランのチーフとしての実力を窺わせたのです。
「こちらは、うちのお客様で・・・。」
「加納と申します。よろしくお願いします。」 田口さんは<祥子>としかわたくしの名をご存知なかったのです。ご紹介してくださるのに、困ってらしたのを不自然じゃないタイミングでフォローできたかしら。
「加納様。これからは先輩のところだけでなく、ここにもどうぞお越しください。魚料理なら、負けませんから。」 にっこり笑った顔は、明るく自信に満ちていました。
「お魚だけじゃなくて、他のお料理もとても美味しかったわ。時々、お邪魔させていただきますね。」
「杉山君、私のお客様を横取りするのはやめてもらおう。」 田口さんの口調は全く怒ってなどいないのに、挑戦的な言葉を吐く後輩にしっかりと釘を刺していることはわかるのです。
「そんなつもりはないですよ。先輩のお客様を横取りするような実力は私にはまだないです。でも、こんなに魅力的なお客様にはぜひもう一度お逢いしたいですからね。だから<お願い>してるんです。」
「もう、どちらのお店にもまたお伺いいたしますわ。」 仕方なくわたくしはそうお返事させていただきました。
「それじゃ、その時も私がエスコートしましょう。」 さりげなく田口さんがシェフからわたくしをカードします。
「ええっ、先輩はいいですよ。加納様お1人でもどうぞいらしてください。」 
「ありがとうございます。」 わたくしは、杉山シェフに微笑みかけながらお答えしたのです。
でも、本当に仲がお宜しいのです。このお二人は。
18 2006 / 07
「牛リブロースのローストです。」 わたくしたちの前にメインディッシュが運ばれてきました。サービス・チーフは簡単にお料理の説明をすると、グラスにワインを満たしてゆきます。
「美味しそうですね。」 新鮮なサラダも添えられています。柔らかそうな霜降りのお肉と洋山葵のソースが見事なコントラストを描いていました。
「いただきましょう。」 田口さんは早速にカトラリーを手にとられたのです。
 
「先ほどシェフはお魚が得意だっておっしゃいましたけれど、お肉もお上手だわ。火の通し具合が絶品ですね。」 舌の上で牛特有の甘みを広げながら・・・蕩けてゆくソテーの味は・・・官能的でさえありました。
「これは私見ですけれど、嗜好というのは一定の方向性を持つようですね。」 わたくしの心の中に芽生えたたった一言を瞬時に読み取ったかのように・・・田口さんの視線に熱が籠りました。
「味の嗜好が極めて似ているということは、女性の好みが似ていることも多いのですよ。両方とも五感を駆使するものだからなのですかね、祥子さん。」 艶っぽいというわけではないはずなのに、田口さんの視線はわたくしの身体の芯を騒がせるのです。
「もう。田口さんたらそんなお話ばっかり。」 わたくしは田口さんに・・・こんな場だからこそなのですが・・・責めのような言葉を諌めるように軽く眉をしかめさえしてみせたのです。
「私の作る料理に感じたのと同じテイストを、ここのシェフの皿に感じてらっしゃるのだとしたら、それは祥子さんが彼好みの女性だということなんですよ。」 逸らしたはずの話題に・・・わたくしは自ら田口さんを引き寄せてしまったようです。
 
「もう、またそのお話ですの。」
「デザートになればやってくるでしょう。私と一緒の祥子さんを見て、シェフが悔しそうな表情をするのが見物です。」 調理人の先輩として・・・いえ、男の先輩としてのシェフの優越感がそこには滲み出ていました。
「わたくしでは役不足かもしれませんわ。」 田口さんは、一流ホテルのグランシェフなのです。今日はわたくしと同席しているから、こうして気をつかってくださっているのでしょう。女優さんやタレントさんなど、本当に素敵な女性には数多く出逢われているはずですもの。
「私は、味覚には忠実な男です。見事な味は自分自身の手で再現できるまで決して忘れる事なんて出来ません。同じ様に、一度お逢いした見事な女性のことも、ずっと忘れることなんて出来ないものなんですよ。」
なんという・・・告白なのでしょうか。こんな風に・・・仰られたのはもしかしたら高梨さん以来かもしれません。
わたくしは、息を飲んでいるだけで、何もお答えすることなど出来ませんでした。
「いまも、そのパールを手で奪って祥子さんの手首を真珠の連なりで縛り上げたいと考えているんです。私の店ならば、その黒いトップスを私の作るメインディッシュと引き換えに取り上げるのに・・・と妄想しています。」
そんな・・・お食事をしている席なのに・・・この方はそんなことを考えてらっしゃるなんて。わたくしは思わず、ナイフを持つ手を止めてしまいました。
「申し訳ありません。美貴様の想い人でもある祥子さんに、いまお話ししたような事が出来る訳はありません。私の戯れ言だと、忘れてください。」

 
年末のお席の石塚さんとは違って、田口さんはわたくしに指一本触れるわけではないのです。なのにこの方は、一緒にお食事をして・・・お話をするだけでストッキングを破る以上の・・・エロティックなシチュエーションにわたくしを投げ入れたのです。
17 2006 / 07
「田口さんたら。」 仔鴨胸肉のローストにオーストラリアの赤ワインはぴったりでした。わたくしの頬を火照らせているのは・・・絶対にワインのせい・・なのです。
「肌を隠しても、その髪をアップにした首筋が雪白の肌だという証明になります。真珠よりも魅力的な曲線を描く肌。素敵でしたからね。」 首筋に無防備に揺れる後れ毛さえ、田口さんの記憶を蘇らせてしまっているのでしょうか。
「もう、お恥ずかしいですわ。お忘れになってくださいな。」 あの夜、メインダイニングで最後に晒してしまった姿をこの方は脳裏に描いているのでしょうか。こんな風にお食事をしながらですのに。
手を伸ばせば触れられる隣の席に案内されたことに、最初わたくしは緊張しておりました。でもいまでは正面から田口さんの視線に晒されない分だけ・・・ほっとしてしたのです。

 
三品目のお魚のプレートが運ばれてまいりました。
「ここのシェフは、私の好みの女性にいつも横恋慕してましたからね。あの石塚様や美貴様が夢中になるほどの・・・いえ、私自身が忘れられない祥子さんは、彼には目の毒の筈です。」 次のオマール海老へ・・・田口さんのカトラリーは進んでいました。
「この海老も美味しいですね。流石に田口さんの後輩さんですこと。」 グリルで味を凝縮した野菜が、ローストした海老の濃厚な味と上手にバランスをとっていました。お料理の話へ話題を振る事で・・・少しでもわたくし自身のことからお話が逸らせればと願ったのです。
「相変わらず、いい腕です。彼は魚が得意なんですよ。」 まるで我が事のようにうれしそうにお話になるのです。
「そうなのですか。田口さんはお肉がお上手だから、お二人が一緒なら最高の贅沢ができそうですね。」
「ははは、確かにそうですね。そう言えば、前回は私の魚料理を召し上がっていただいてないんですね。この次いらしたときには、これに負けないくらいの魚料理をお出ししましょう。」 プロの負けん気というのでしょうか。プライドを滲ませた田口さんの表情は男らしくて生き生きとして見えます。お仕事に充実されている男性は、本当に素敵です。
「楽しみですこと。でも、美貴さんはお忙しいみたいですからなかなかお伺いできないかもしれません。」 
「祥子さんでしたら、お1人でもお席をきちんと用意しておきます。個室がよろしければVIPルームをご用意しますし。」 ホテルのメインダイニングに相応しいあのVIPルームで、わたくしは4人の男性に責められた後の身繕いを・・・あの夜したのです。
「ふふふ、1人でうかがってVIPルームなんて申し訳ないわ。そっと、空いているお席でひっそり美味しく頂戴することにします。」 あのメインダイニングをまた訪れることに、わたくしはまだ決心がつかなかったのです。あまりに・・・淫らな想い出がまだ風化してはいなかったのですから。

 
「最近は、美貴様達とはお逢いになってないのですか?」
「ええ、あれ以来どなたともお逢いしてないんですよ。田口さんのところにはいらしてるのでしょう。」 皆さんお忙しいのでしょう。特にお誘いもないままに半年が過ぎていました。あのバーに伺えば簡単にお逢いする事も出来たのでしょうけれど、敢えてお伺いすることもいたしませんでした。
「そうでしたか。ええ、美貴様と山崎様は時々いらしてくださいます。石塚様はお1人で一度だけいらしたでしょうか。なかなかゆっくりお席に伺えないのでお話することもできなくて。」 きっとお忙しいのでしょう。あのお味をコンスタントに提供なさるのですからお客様は引きも切らないのでしょう。
「祥子さんのことはずっと気になっていたのですけれど、あの方達に私からは切り出しにくくて、今日お逢い出来てよかったです。」 ははは、笑いながらワイングラスを空けられました。
「今日お逢いしたことをお話ししたら、あの方達に悔しがられるかもしれませんね。」
「ふふふ、そうだとよろしいのですけれど。」 美貴さん、山崎さん、石塚さん、そして望月さん。あの方達のことが懐かしく思い出されました。ウィットに富んだあの方達との会話を久しぶりに楽しみたくなりました。
16 2006 / 07
ほとんどの席が向かい合ってお食事をするテーブルの中で、この席だけが二人が夕暮れの庭を楽しめる様に隣り合って座るようになっていたのです。
田口さんはわたくしの左手にお座りになっていました。
月曜日というウィーク・デーの始まりの日だということも、少し早いお時間のせいもあるのでしょう。ふたりの周囲の席には他のお客様はいらっしゃらなかったのです。
「よく憶えてらっしゃいますね。」
「今日はきっちり襟元まで隠してらっしゃいますが、あの時、祥子さんの白い背中を見た時は心臓が止まるかと思いましたよ。」 アメリカンスリーブの、肩から背中・・・そして仄かに膨らみのわかるバストサイドまでがあらわにされたドレスを纏っておりました。今日のように・・・髪もアップにして。
「ふふふ お上手ですこと。」 わたくしは前菜のプレートを前にして、軽くシェフの言葉を躱してみたのです。

 
「前菜です。草生茄子と芝海老のゼリー寄せ ガスパチョソースでございます。」 サービスの男性が簡単にですがお料理の説明をしてくださいます。その瞬間だけ、田口さんの顔がプロとしての表情を取り戻します。
きっと根が優しい方なのでしょう。威厳に満ちたお顔も素敵でしたが、わたくしに対して優しく変わってゆく表情にほっといたしました。
「いただきましょうか。」 礼をしてサービスの方が下がられたところで、田口さんはカトラリーを手になさいました。
「初夏らしい爽やかなお皿ですわね。」 茄子の歯触りと芝海老の美しい色合いと、ガスパチョの爽快な香りを活かしたソースの仕上がりが、シェフの確かな腕前を感じさせます。
 
「先ほどのサービスはここのチーフなんです。私のことを知っていますから、きっと後でシェフが挨拶にきますよ。」
「お帰りになったはずの先輩がどうして、って?」 そう、あそこでお逢いしなければもう20分も前には二人とも帰路についていたはずなのですから。
「ははは、その言葉を今頃キッチンで言ってる頃でしょう。」 目の前のシャンパンのグラスに手を伸ばされます。このお料理になら、まだワインよりはマムのすっきりとしたお味がぴったりのようです。
わたくしも、お食事というには少し早いペースでお酒を頂戴しておりました。
「逢わせたくないな、祥子さんには。」
「わたくしがご一緒なのはご迷惑でしたか?」 プライベートとはいえ、お仕事関係の後輩さんです。一度きりお店にうかがっただけの、わたくしがこんな風に親しげにしているのはご都合が悪いのかもしれません。
そういえば、田口さんにご家庭があるのかも・・・わたくしは知りませんでした。
「いえいえ、迷惑なんかじゃないです。」 用意された赤ワインはオーストラリアのものだそうです。鮮やかにテイスティングをなさると、首をかしげるわたくしに、顔の前で指を振りました。
「祥子さんは、彼の好みにぴったりだからですよ。祥子さんに逢わせたら、きっと後がうるさくて仕方ないにちがいない。」 あの年末のテーブルで石塚さんがおっしゃったような言葉を、今度はこの方がおっしゃいます。
「もう、そんなこと。田口さんの後輩さんなのだから、お若いのでしょう。わたくしなんて、眼中にはないと思いますわ。」 こんなレストランのチーフシェフなのです。30代の後半くらいでしょう。
「34だって言ってたかな。いやぁ、この世界は実績なので年齢には疎くて。ははは。」
「いいですわね、腕の世界。」
「その分厳しいですけれどね。」 目の前に田口さんが上げたグラスの中には、ルビー色に光るワインが揺れていました。
「今夜の祥子さんの姿は、あの時ほどは刺激的じゃないけれど。首元まできっちり覆った姿も却って想像を掻き立てられるんです。」
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