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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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29 2006 / 11
「ここって、竹上建設さんが建ててらっしゃるビルなの?」
「そうだよ。完成すれば、あの石塚Jr.が販売する。もう少しで鳴り物入りのCMがあちこちの番組で流れる様になるよ。」
「なにになる予定なんですの?」
「このビルは、下層階がショッピングセンター、中層階にオフィス、上層階はあるシティホテルが入ることになっている。」
34階・・・ここは多分、将来はホテルになるフロアでしょう。
「このビル全部の設計を長谷川さんが手がけられたの?」
「はは、うちの設計事務所が手がけてる。」
「でも・・・」 そう、石塚さんは言っていた。こういう仕事は全て長谷川さんがこなしていると。
「でも、どうして・・・?長谷川さんが手がけた物件なら、他にいくつもあるでしょう。」
「そうだね。気まぐれかな。」 もう1本、シャンパンのミニボトルを冷蔵庫から出すと、ご自身とわたくしのグラスを満たして・・・今度はソファーにはもどってはいらっしゃいませんでした。
黒のウールのジャケットだけを脱いでソファーの背に掛けると、グラスを持ってグランドピアノの前に座られたのです。

パララ・ラ・ン・・・ わたくしからは、長谷川さんの背しか見ることができません。それでも澄んだピアノの音は、彼の腕の動きに添って響いていました。
「誰にも邪魔されずに、祥子さんと思う存分過ごしたかった。それに、この間の船上パーティで僕の正体もバレたしね。だったらこういうのもいいかと思ったんだよ。少し自慢もしたかったし・・ね。」
最初はランダムに叩かれていた鍵盤は、いつしか今夜長谷川さんの隣に腰を下ろした時に流れていた<枯葉>へと変調してゆきました。
「これって・・・まさか・・もしかしてわたくしのために?」
「ふふ、祥子さんも変な人だね。君のため以外に、なんでここにこんなものが必要だと思うんだい?」
「なんて・・こと・・。」 
たとえ、設計を一手にご担当されているとは言っても、こんな機材を運び込んで・・・1人で今夜だけとはいえ一晩中勝手に出来るなんて・・・セキュリティの上からも考えられません。
「このフロアはいずれスポーツクラブになる予定なんだ。もう一つ上のフロアはバーとレストランのフロアだ。躯体が出来上がったところで、設計のイメージを固めたいと竹上開発の担当者とここの現場監督に相談したら、二つ返事でこの空間を作ってくれたよ。24日の夜まで、このビルには僕1人しか立ち入れないことになっている。」
こんな風に話しながら、長谷川さんの手は止まりませんでした。ジャジーな枯葉を情感たっぷりに・・・編曲しながら弾いてゆくのです。
わたくしは、彼のピアノの上を走るしなやかな指が見たくなって、グラスを持ってピアノの側に近寄ったのです。
「ここじゃ、気に入らないかな?」 わたくしの返事など気にする風もなく、長谷川さんの指はピアノを操ります。今度は・・・エミリー・・です。
「気に入らないなんてことないわ。ごめんなさい、びっくりしたの。こうして連れて来て下さるっていうことは、あなたが手がけた物件だとは思ったの。でも『ほら、これが・・・』って本当に教えて下さるだけで別のところに行くのかと思ったわ。」 長谷川さんの指は、ときおり関節が白くなるほどに力強く鍵盤をたたくかと思えば、まるで触れているだけでピアノが快感のため息を漏らしているかの様に、軽く・・羽のように長い指を閃かせてゆくのです。
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28 2006 / 11
工事用のスケルトンエレベーターをいくつか乗り継ぎました。
「ここだよ。」 最後に、長谷川さんに背を押されて降りたフロアには、エレベーターから漏れる明かりで鉄骨に<34>という数字を書いた紙が貼付けられていたのがわかりました。
バァン・・・ゥィィィィィ・・・ 長谷川さんがエレベーターのすぐ側にあった建築用の大型のブレーカーを繋いだようです。フロアにところどころに強い照明がついたのです。
フロアの床はまだコンクリートを打ちっぱなしにしただけのようでした。いくつかの壁は出来上がっていましたが、長谷川さんが向われた先は、エレベーターから外壁までの間は・・・柱はあるもののまだ壁のない空間でした。
エレベーターホールから見ると少し歪んで見えるフロアの先には、現在のこの内装の状態にはそぐわないいくつかのものが見えたのです。その1つは、グランドピアノでした。
「こっちだ。来なさい。」 長谷川さんが、空間を摘まみ上げます。手元にたくし上げられたものを見て、それが天井から床まで張り巡らされた透明な建築用のシートであることがわかりました。
1人、エレベーターホールに残されるのは不安でした。
わたくしは小走りに長谷川さんに近づくと、長身の彼が開けてくれた空間へ入り込んだのです。
「次はここ。」 同じようなシートを3枚、わたくしは長谷川さんと共にくぐったのです。
その先には、100坪ほどの空間が広がっておりました。

建築用の大きな照明が、まるで間接照明のように配されて空間を明るく照らします。
外は肌寒いほどですのに、あちこちに設けられた大型のオイルヒーターはほんのりと室温をあたためておりました。
そして、眼の前には・・・わたくしの見たものが錯覚ではないと諭すように、20畳ほどのペルシャ絨毯の上に応接セットとグランドピアノが置かれていたのです。

「流石の祥子さんも、こんなところに来るのは初めてかい?」
「え・え・・・」 マンションのプランニングのお仕事をお手伝いをしたことはありました。それでも建築途中の、まだ内装すら済んでいない建物の中に、ヘルメットもなしで入ったのははじめてでした。
わたくしをソファーへとエスコートすると、長谷川さんはわたくしの肩に手をかけて座る様に促すのです。
ムートンのコートを脱いで袖だたみにしてソファーの肘掛けにかけると、ゆったりとした座面の革張りのソファーにわたくしは腰を下ろしました。
「このビルは、いま僕が手がけている仕事の1つなんだよ。」 長谷川さんも暖まって来たこのあたりの空気を確認すると、バーバリーのコートを脱がれました。わたくしのコートと一緒に、ソファーの後ろにあるハンガーラックへと吊るしてくださいます。
そして、次に向かわれたのはソファーセットの少し先にある小さな冷蔵庫でした。
ヴーヴクリコのミニチュアボトルと、グラスを2つ。長谷川さんは大理石のテーブルに並べました。
「もう、ライフラインは完備している。化粧室も、ほらあそこに出来上がっているから心配しなくていい。」 長谷川さんが指をさしたのは、さきほどエレベーターを降りてすぐに目についた壁に囲まれた空間でした。3枚の建築用シートの2枚目と3枚目に挟まれる様に・・・その空間はありました。
「さぁ、3ヶ月ぶりの再会に乾杯しよう。」
「乾杯♪」 チン・・・ グラスを交わす澄んだ音が響きます。でもわたくしはまだ不思議な心持ちから抜け出すことができなかったのです。
そこに配されているものは、1つ1つはとても見事なものでした。
でも、ある訳のない場所にレイアウトされた贅沢な品々は・・・まるでダリの絵の中に入り込んでしまったようなシュールな感覚に私を浸していたのです。
27 2006 / 11
「いいライブだった。」
「ええ、ワインもお食事も美味しかったですものね。ごちそうさまでした。」 改めて長谷川さんにお礼をしたのです。二人、一緒になっていた伝票を今夜は彼が清算してくれていたからです。
「いや、祥子さんのお陰で美味しいものが食べられたようなものさ。」 隣の席で笑う長谷川さんは、手ぶらでらっしゃいました。
わたくしは、少し大きめなバッグが1つ。書類の類いはオフィスに置いてきましたが、今夜は長谷川さんと過ごすと伺っていたのでパンティとストッキングの替えだけはポーチに入れて忍ばせてきていたのです。

タクシーはいくつかの大きな交差点を曲がり、15分ほどで大きな工事中のビルの前に停まりました。
「ああ、ここでいい。ありがとう。」 長谷川さんは料金を差し出しています。
「ありがとうございました。」 開かれたタクシーのドアから降り立ったわたくしは、どこに行けばいいのか・・・まったくわからなかったのです。ここは、永田町の近くなのでしょうか。オフィス街のまっただ中。当然ですが、深夜23時を回っているのです。周囲のビルはどこも明かりが落ちています。
「祥子さん、こっちだよ。」 長谷川さんの声に、わたくしは大通りから街区へ入ってゆく眼の前の道を彼に付いて歩いてゆきました。
外観は既に出来上がっていますが、まだ仮囲いは外れてはいませんでした。白いその仮囲いには、黒々とビルの名称と<竹上開発><竹上建設><黒部設計>の名前が印されていたのです。
「ここ?」 質問を口にしようとしたわたくしは、表通りから丁度真裏にあたる路地に入ったところで、長谷川さんは仮囲いのシートをずらして待ってらっしゃる姿に気付いたのです。
「早く来なさい。」 わたくしをシートの中に引き入れると、その中のゲートを閉めてセキュリティーカードを差し込みます。
長谷川さんの手には、いくつもの鍵とカードがありました。
ゲートの中には、長谷川さんのベンツが停まっていました。
これに乗って・・・いいえ、今夜彼はわたくし以上にワインを召し上がっているのです。だとすると・・・。
「寒いだろう。中に入ろう。」 大型の懐中電灯を手にした長谷川さんが、ビルの通用門に当たるドアを開けているのです。
「ここは、どこ?」
「質問は上に上がったら答えてあげるよ。」 優しい声で、わたくしの肩に手を回すと、背中のドアの鍵を下ろしたのです。
26 2006 / 11
「そうですね。ピアノの彼も久しぶりなので、余計に解るのかもしれません。力任せな感じが消えて、こう音が削ぎ落とされた様になってエミリーなんてとても心地良く聞かせてもらいました。」
「サックスもね。このデュオも久しぶりですものね。少し緊張感があるけれど、なんていうかそれがいい音の厚みになっているような気がするわ。」
「お二人にそう言っていただけると彼らも励みになります。Secondセッションもゆっくりお楽しみ下さい。」

「祥子さんとここで逢うと、ゆっくり二人きりというわけには行かないみたいだね。」 別のお客様のところに向う沢田さんの背を見つめながら、長谷川さんが愉快そうにおっしゃいます。決してご機嫌を損ねてらっしゃるわけではないと、その表情でわかりました。
「ふふふ。」
「あの主宰者の彼も、君のファンらしい。駄目だよ、誘われても付いて行っちゃ。」
「心配なさらなくても、誘われたりなんてしません。」 グラスに残っていたワインを口にいたしました。オリーブは微かな塩味と完熟した実ならではの滋味がふんわりと口中に広がります。このフレッシュさは小豆島あたりの国産のものでしょう。厨房からだと言ってくださったおつまみの数々は、どれもワインにぴったり合うものばかりでした。料理長は和食出身の方だと聞いていましたが、もうお一方の洋食のシェフのセンスはなかなかのようです。
30分の休憩もそろそろ終わりなのでしょうか?
お席をはずされていたお客様がふたたび戻っていらっしゃいます。
Secondセッションの1曲目は、いつものTake Fiveでしょう。
「まあいいさ。今日はこのあと祥子さんを独り占めできるんだろう?」
「ええ、お約束通りに。」
わたくしの言葉が終わると同時に、照明が落ちて・・・ピアノがTake Fiveのあの独特のリズムを刻みはじめたのです。

Take Five
パーカルズ・ムード
Fly me to the Moon
Work Song
Secondセッションはリズミカルに楽しめる曲で構成されていたのです。
長谷川さんとわたくしは、あらためて言葉を交わすことはありませんでした。
ただ、眼の前のお皿に手を伸ばし、空いたグラスをワインで満たす時だけ自然と視線がまじわるのです。
その瞬間、長谷川さんの目元だけがふっと和らぐことに、わたくしは不思議な幸せを感じていたのです。

「ごちそうさまでした。」 フロントで会計を済ますと、わたくしは支配人とサービスチーフにそうご挨拶をして、長谷川さんが差し出してくださるムートンのコートに袖を通しました。
「車が来ています。また、どうぞお越し下さい。」 長谷川さんがお願いしていたのでしょうか、タクシーが正面玄関で1台待っておりました。
「冷えています。お風邪など召しません様に。」 先に乗り込んだ長谷川さんの隣に座ったわたくしを確認して、支配人はドアを閉めてくださいました。
「おやすみなさいませ。ありがとうございました。」
そろって頭を下げるお二人の声にかぶる様に、長谷川さんが行き先を運転手さんに告げられたのです。
でも、そこは・・・わたくしにはあまり心当たりのない場所の名前でした。
25 2006 / 11
パチ・パチパチパチ・・・・
「これでFirstセッションを終了いたします。Secondセッションまで約30分ほどの休憩を頂戴します。どうぞゆっくりとお食事・ご歓談をお楽しみください。」 司会の沢田さんの声と同時に、照明が明るくなってゆきました。

「忙しかったんじゃないのか?」
カラ・ン・・・ ワインサーバーからボトルを取り上げると、クロスで水滴を拭き取りわたくしのグラスに注いでくださるのです。
「ごめんなさい。打ち合わせがひとつ増えてしまって。」
「ははは、こんな祥子さんと一緒にいられるなら仕事の1つや二つ余計に発注したくもなるな。」
チン・・ ご自分のグラスにも蜂蜜色の液体を注ぐと今日はじめてグラスを交わしたのです。演奏中、不用意にそういうことをなさらないのがこの方らしい好ましいところでした。
「お世辞がお上手ね。」 冷やされたワインは火照りはじめた喉を心地良く冷やしてゆきます。
「世辞なんか言わないさ。な、支配人。」
「ええ。よろしければこちらは厨房からです。」 シルバーのトレイから支配人が差し出したのは白い大きな四角いお皿でした。
骨つきハムのキューブカット・2種類のチーズ・ガーリックトースト・ドライフルーツ・2種類のオリーブ・・・そしてお野菜がきれいに盛りつけられておりました。
「加納様にお越しいただいて、厨房もサービスも喜んでおります。どうぞごゆっくりなさってください。」 2枚の取り皿とフォークとペーパーナフキンもテーブルに並べられました。
「ほら、祥子さんだからだよ。僕だけじゃ、こんな皿は出て来ないね。」
「ご容赦ください。長谷川様。」
腰の低い支配人は、一礼をして他の席のオーダーを聞きに行かれました。この方は、わたくしと長谷川さんのはじめての情事を襖ごしに全て聞いていらした方でした。
わたくしたちの秘密の関係をご存知の数少ない方だったのです。
「オリーブはどっちがいい?」 長谷川さんが取り皿を手にされていました。
「グリーンのほうをください。」 程よく熟したブリーとオリーブとガーリックトーストを乗せたお皿をわたくしに差し出してくれます。
「ありがとうございます。ごめんなさい、わたくしがしないといけないのに。」
「いいさ。今夜来てくれたからね、その些細なお礼の気持ちさ。」 ご自身はハムとブラックオリーブを取り分けて、さっそくワインとのマリアージュを楽しんでいらっしゃいます。
「お約束は違えませんわ。」
「ああ、それはわかっている。だけど、1曲目のオレオが終わって、枯葉が始まっても祥子さんの姿が見えなかった時には本気で振られたかと思ったよ。」
「もう、そんなに信用がないなんて・・・」
「夏の時もあっさりと石塚のジュニアに攫われたからな。」
「あの時は・・・」
「お久しぶりです。加納様、長谷川様。」 わたくしの抗弁は、ジャズライブの主宰者の沢田さんの声に消されてしまいました。
「いつも、気まぐれですみません。でも、ピアニストの腕が随分上がりましたね。」
「いえいえ、気まぐれでもこうしてお二人に来ていただけるだけで私も嬉しいんですよ。」 沢田さんの視線が、わたくしのスカートのスリットを這って行ったような気がして少し緊張してしまう・・・。
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