祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
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15 2006 / 05
わたくしは試着をしていたナイトウェアを脱ぎ、店頭に展示されていた時のようにハンガーに戻します。
ガーメント・トレイに先ほどのバッグと並べて置かれたスリップを身に纏いました。
ぴったりとフィットするオーガンジーのスリップの胸元の・・・柔らかな乳房を出来るだけランジェリーを着けているのと同じ様に整えます。
裾と胸元にはアクセントに桜をイメージしたリバーレースがあしらわれていました。きちんとコートを着込めばその下がスリップだけとは気づかれないでしょう。今年流行の透ける素材を重ねたスカートを身に付けていると思わせる事もできるはずです。
ブースの外からカウンターの女性にわたくしの衣服を一緒に包んでくれ と、言う高梨さんの声が微かに聞こえます。
慇懃な返答も・・・
わたくしはシングル打ち合わせのスプリングコートを釦を全て止めて着込み、バッグの中に入れて来たエルメスの芍薬柄のスカーフでウエストをマークしたのです。
「ありがとう」「お預かり致します」
バックストラップパンプスを履くわたくしから商品を受け取ってくださるスタッフの女性に・・・まるで何事もないかのように声をかけます。
でも、心の中は知られてはならないいまの姿に・・・淫媚な緊張を強いられていたのです。
もう、お会計も済まされたのでしょう。高梨さんは店内に置かれた応接セットでゆったりとVogueをご覧になっていました。
「あなたのお写真が載っているの?」
「いや、この号は少しだけだな。」 流石に専門店です。取り寄せられた仏語のVogueはほとんどがランジェリーの特集だったのです。
「こんなコレクションもあるのね。」 オートクチュールのメゾンにも劣らない美しいモデルが着こなすランジェリーのショー。わたくしは座面の低い深々としたソファーに腰を下ろす事無く、高梨さんの隣に立ち雑誌を覗き込んだのです。
「ああ 僕は専門外だけどね。」 おもむろに視線を上げた彼は、左手をわたくしの腰にまわすと・・・ランジェリーとスプリングコートだけに包まれたヒップをむぐぅと掴んだのです。高梨さんの指示通りの姿になったわたくしに、満足そうな微笑みを向けました。
「・・ぁん」 だめです・・・唇を噛み締め眼でどんなに訴えても、緊張感で敏感さが増した肌を刺激されてわたくしの身体は思わず反応を返してしまっていたのです。
「珍しいな、祥子さんがTバックじゃないなんて」 そのまま手を腰の丸みに沿わせて撫で上げるのです。
「もう・・おいたはだめです」 仲の良い大人の恋人同士のような戯れ合いに聞こえるように、敢えて羞恥よりも淫媚な雰囲気を言葉に乗せて反論をしてみせたのです。
「お待たせいたしました」 ソファーまで、少し大きめのショッピングバッグを両手に捧げて来たスタッフの声がいたしました。
「ああ ありがとう。」 スプリングコートの腰から手を離し、高梨さんが立ち上がりました。
「ありがとう」 わたくしはスタッフの手からショッピングバッグを受け取りました。そして・・・高梨さんに微笑みかけます。
「嬉しいわ、こんなに素敵なナイトウェア。ありがとうございます」
「3ヶ月淋しい想いをさせたお詫びだよ。気に入ってくれてよかった。」 久しぶりに再会した恋人同士・・・そう思わせる言葉をわざとスタッフに聞かせる様に口にしながら・・・ショップの出口までわたくしをエスコートするのです。
「ありがとうございました。どうぞ、またお揃いでお越し下さいませ。」
ほんのかすかな好奇心さえも感じさせる事無く、にこやかに会釈をするスタッフに見送られ・・・わたくしたちはショップをあとにしたのです。
「これは僕が持つよ。」 高梨さんはわたくしの手からショッピングバックを取り上げたのです。彼が持つと大きめと思われた紙袋も・・・ごく普通のお買い物のように見えるのです。
長めのハンドルをわたくしの側でない方の肩に掛け、空いた腕を・・・当然のように腕を組む形に差し出します。
すこしだけためらい・・・そして、心を決めた様に彼の腕にわたくしの手を預けました。
ガーメント・トレイに先ほどのバッグと並べて置かれたスリップを身に纏いました。
ぴったりとフィットするオーガンジーのスリップの胸元の・・・柔らかな乳房を出来るだけランジェリーを着けているのと同じ様に整えます。
裾と胸元にはアクセントに桜をイメージしたリバーレースがあしらわれていました。きちんとコートを着込めばその下がスリップだけとは気づかれないでしょう。今年流行の透ける素材を重ねたスカートを身に付けていると思わせる事もできるはずです。
ブースの外からカウンターの女性にわたくしの衣服を一緒に包んでくれ と、言う高梨さんの声が微かに聞こえます。
慇懃な返答も・・・
わたくしはシングル打ち合わせのスプリングコートを釦を全て止めて着込み、バッグの中に入れて来たエルメスの芍薬柄のスカーフでウエストをマークしたのです。
「ありがとう」「お預かり致します」
バックストラップパンプスを履くわたくしから商品を受け取ってくださるスタッフの女性に・・・まるで何事もないかのように声をかけます。
でも、心の中は知られてはならないいまの姿に・・・淫媚な緊張を強いられていたのです。
もう、お会計も済まされたのでしょう。高梨さんは店内に置かれた応接セットでゆったりとVogueをご覧になっていました。
「あなたのお写真が載っているの?」
「いや、この号は少しだけだな。」 流石に専門店です。取り寄せられた仏語のVogueはほとんどがランジェリーの特集だったのです。
「こんなコレクションもあるのね。」 オートクチュールのメゾンにも劣らない美しいモデルが着こなすランジェリーのショー。わたくしは座面の低い深々としたソファーに腰を下ろす事無く、高梨さんの隣に立ち雑誌を覗き込んだのです。
「ああ 僕は専門外だけどね。」 おもむろに視線を上げた彼は、左手をわたくしの腰にまわすと・・・ランジェリーとスプリングコートだけに包まれたヒップをむぐぅと掴んだのです。高梨さんの指示通りの姿になったわたくしに、満足そうな微笑みを向けました。
「・・ぁん」 だめです・・・唇を噛み締め眼でどんなに訴えても、緊張感で敏感さが増した肌を刺激されてわたくしの身体は思わず反応を返してしまっていたのです。
「珍しいな、祥子さんがTバックじゃないなんて」 そのまま手を腰の丸みに沿わせて撫で上げるのです。
「もう・・おいたはだめです」 仲の良い大人の恋人同士のような戯れ合いに聞こえるように、敢えて羞恥よりも淫媚な雰囲気を言葉に乗せて反論をしてみせたのです。
「お待たせいたしました」 ソファーまで、少し大きめのショッピングバッグを両手に捧げて来たスタッフの声がいたしました。
「ああ ありがとう。」 スプリングコートの腰から手を離し、高梨さんが立ち上がりました。
「ありがとう」 わたくしはスタッフの手からショッピングバッグを受け取りました。そして・・・高梨さんに微笑みかけます。
「嬉しいわ、こんなに素敵なナイトウェア。ありがとうございます」
「3ヶ月淋しい想いをさせたお詫びだよ。気に入ってくれてよかった。」 久しぶりに再会した恋人同士・・・そう思わせる言葉をわざとスタッフに聞かせる様に口にしながら・・・ショップの出口までわたくしをエスコートするのです。
「ありがとうございました。どうぞ、またお揃いでお越し下さいませ。」
ほんのかすかな好奇心さえも感じさせる事無く、にこやかに会釈をするスタッフに見送られ・・・わたくしたちはショップをあとにしたのです。
「これは僕が持つよ。」 高梨さんはわたくしの手からショッピングバックを取り上げたのです。彼が持つと大きめと思われた紙袋も・・・ごく普通のお買い物のように見えるのです。
長めのハンドルをわたくしの側でない方の肩に掛け、空いた腕を・・・当然のように腕を組む形に差し出します。
すこしだけためらい・・・そして、心を決めた様に彼の腕にわたくしの手を預けました。
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14 2006 / 05
「失礼いたします。 あら、お客様にぴったりですね。とてもお似合いです。」 スタッフが試着室のドアを開けるとわたくしを見て、予想通り・・・と言った風な声を上げます。
「身長もおありですから、この丈を充分に着こなしていただけますわ」 165cmの身長は、フルレングスのナイトウェアを辛うじて着こなすことが許されていたのです。日本人の女性の平均身長でこれを身に着けると裾をひきずってしまい、諦める方も多いのですよと・・・付け加えます。
しなやかに身体を包むナイトウェアのラインに、この手のものとしては華奢だとはいえ・・・革の首輪の存在の異質さが際立っていました。スタッフの女性は気づいていないはずはないのに・・・こういった高級店ならではのお行儀の良さで見ないふりをなさっているのでしょう。
「どれ」 スタッフに声を掛けて高梨さんが試着室を覗き込みます。
ドア一枚の空間から、スタッフは一歩下がりました。
「おお 本当に似合うな。悩ましいラインで悩殺されそうだよ。」
「いやだわ。はずかしい・・・。」 フォトグラファーの高梨さんの眼にわたくしの姿はどう映っているのでしょうか。
「これをもらうよ。」 スタッフが控える後を振り向いて高梨さんはそう告げます。
ありがとうございます・・・スタッフの明るい声と他のお客様に声を掛けられて試着室から離れてゆく靴音が聞こえたのです。
「祥子」 試着室のドアを大柄な身体で塞ぐ様に立つと、高梨さんはわたくしを<しょうこ>と呼んだのです。
「・・・はい」 鏡越しに視線を交わしていた彼に向き直ります。
「着て来た服を僕に渡すんだ。」
「えっ・・・」
「コートとスリップは着ていいよ。後のものは商品と一緒に包んでもらうから」
「だめ・・そんなこと」 ここは試着室です。すぐ外には、お店のスタッフと他のお客様がいらっしゃるのです。声を顰めるしかありません。
「祥子 さっき僕にそれを着けさせたお仕置きだよ。これ以上抗うならパンティもスリップも取り上げる。その方がいいのか?」
「だめ・・」
「黒の服だからどうかなと思ったが、祥子のことだからきっと今日は桜色のランジェリーを着けていると思った。予想通りだよ。さぁ、渡してさっさと着替えなさい。」 ショップの中に2つしかない試着室をいつまでも占領しているわけにはいきません。わたくしは諦めて、シルクニットとブラックデニムのスカートを高梨さんの手に渡しました。
「それも寄越しなさい。」 彼の視線は桜色のハーフカップブラに注がれています。
「おねがいです。勝手に着けたりしないから・・・これを包んでもらうのだけは許して。」 ここはランジェリーショップなのです。商品としてこちらのものに劣るものではなくても、ランジェリーの一つであるブラを一緒にとは言えません。
ましてあの女性スタッフは・・ニットとスカートを一緒に包んでくれと渡された時点で・・・高梨さんとわたくしがしていることに気づいてしまうでしょう。桜色の首輪を無視したのと同じ慇懃さでわたくしに起きていることを無視して二人を送り出す彼女に、このGカップの乳房までもがあらわにされているとは知られたくなかったのです。
「こうして、仕舞っておきます。それに触れればわかってしまうことですから・・・。ね、おねがい。」 わたくしはブラを取り上げるとカップを重ねる様にしてたたみ、桜の花のジャガードのバッグに潜ませたのです。
「ふふ しかたないな。次に逆らったら、人前でそのバッグからブラを取り出してみせるからね。見た人は祥子が自分からはしたない露出をしてみせている厭らしい女だと思うだろうからね。」 あぁ こんなことまで責めの道具にされてしまうのね。
「はやく着替えなさい。待っているよ。」 そう言って内側がガラス張りになったドアを閉めると高梨さんは店内に戻っていかれました。
「身長もおありですから、この丈を充分に着こなしていただけますわ」 165cmの身長は、フルレングスのナイトウェアを辛うじて着こなすことが許されていたのです。日本人の女性の平均身長でこれを身に着けると裾をひきずってしまい、諦める方も多いのですよと・・・付け加えます。
しなやかに身体を包むナイトウェアのラインに、この手のものとしては華奢だとはいえ・・・革の首輪の存在の異質さが際立っていました。スタッフの女性は気づいていないはずはないのに・・・こういった高級店ならではのお行儀の良さで見ないふりをなさっているのでしょう。
「どれ」 スタッフに声を掛けて高梨さんが試着室を覗き込みます。
ドア一枚の空間から、スタッフは一歩下がりました。
「おお 本当に似合うな。悩ましいラインで悩殺されそうだよ。」
「いやだわ。はずかしい・・・。」 フォトグラファーの高梨さんの眼にわたくしの姿はどう映っているのでしょうか。
「これをもらうよ。」 スタッフが控える後を振り向いて高梨さんはそう告げます。
ありがとうございます・・・スタッフの明るい声と他のお客様に声を掛けられて試着室から離れてゆく靴音が聞こえたのです。
「祥子」 試着室のドアを大柄な身体で塞ぐ様に立つと、高梨さんはわたくしを<しょうこ>と呼んだのです。
「・・・はい」 鏡越しに視線を交わしていた彼に向き直ります。
「着て来た服を僕に渡すんだ。」
「えっ・・・」
「コートとスリップは着ていいよ。後のものは商品と一緒に包んでもらうから」
「だめ・・そんなこと」 ここは試着室です。すぐ外には、お店のスタッフと他のお客様がいらっしゃるのです。声を顰めるしかありません。
「祥子 さっき僕にそれを着けさせたお仕置きだよ。これ以上抗うならパンティもスリップも取り上げる。その方がいいのか?」
「だめ・・」
「黒の服だからどうかなと思ったが、祥子のことだからきっと今日は桜色のランジェリーを着けていると思った。予想通りだよ。さぁ、渡してさっさと着替えなさい。」 ショップの中に2つしかない試着室をいつまでも占領しているわけにはいきません。わたくしは諦めて、シルクニットとブラックデニムのスカートを高梨さんの手に渡しました。
「それも寄越しなさい。」 彼の視線は桜色のハーフカップブラに注がれています。
「おねがいです。勝手に着けたりしないから・・・これを包んでもらうのだけは許して。」 ここはランジェリーショップなのです。商品としてこちらのものに劣るものではなくても、ランジェリーの一つであるブラを一緒にとは言えません。
ましてあの女性スタッフは・・ニットとスカートを一緒に包んでくれと渡された時点で・・・高梨さんとわたくしがしていることに気づいてしまうでしょう。桜色の首輪を無視したのと同じ慇懃さでわたくしに起きていることを無視して二人を送り出す彼女に、このGカップの乳房までもがあらわにされているとは知られたくなかったのです。
「こうして、仕舞っておきます。それに触れればわかってしまうことですから・・・。ね、おねがい。」 わたくしはブラを取り上げるとカップを重ねる様にしてたたみ、桜の花のジャガードのバッグに潜ませたのです。
「ふふ しかたないな。次に逆らったら、人前でそのバッグからブラを取り出してみせるからね。見た人は祥子が自分からはしたない露出をしてみせている厭らしい女だと思うだろうからね。」 あぁ こんなことまで責めの道具にされてしまうのね。
「はやく着替えなさい。待っているよ。」 そう言って内側がガラス張りになったドアを閉めると高梨さんは店内に戻っていかれました。
13 2006 / 05
「この前の時、あの首輪の痕があまりに可愛そうだったからね。」 この方と数日を過ごす間、わたくしの首には赤い大型犬の首輪が着けられておりました。大型犬用として用意されたその首輪は、お別れする時には・・・わたくしの白い喉にくっきりと赤い痕を2本刻んでいたのです。
「祥子用に探して来たんだよ。」
「・・・ありがとう・・ござい・ま・す」 わたくしは恥辱を与える道具に対する行為なのに・・・思わず御礼の言葉を口にしてしまいました。
パリ。ずっとご連絡もしないまま3月の初旬ごろにいらした場所のはずなのに、まだわたくしを思っていて下さったことが嬉しかったのです。
「随分と素直だな。」 高梨さんは目の前のカップの冷たいコーヒーを飲み干しました。
「本当だったんですね。」 わたくしからの連絡を待っていた事・・・そして少なくともわたくしのことを考えていて下さった事は。
「嘘なんか吐かないさ。」 ほんの短い言葉なのに・・・深く響く高梨さんの声。
彼を見つめてこくん・・と一つ頷くわたくしに、首輪の鈴がり・・りん・・と音色を添えるのです。
「さ ここの桜は飽きたから、桜並木でも散歩しようか。」
「はい」 日が翳りはじめたテラス席はほんの少し寒くなってきていたのです。
「コートの下に何を着てきたんだ? 見せてごらん」
「これですわ」 わたくしはコーヒーの最後の一口をいただくと、膝掛けを畳み・・・コートの釦を外して、黒でまとめたニットとデニムスカートの装いをお見せしたのです。
「そうか。じゃぁ、散歩の前に一軒買い物に付き合ってくれ。」 伝票を掴むと先に立って、ショップの並ぶ建物の中へと歩いて行かれたのです。
春物のあでやかな色の商品が並ぶショーウィンドウを眺めながら、彼がわたくしを連れていったのはインポートランジェリーの専門店でした。
「こちら?」 この方がランジェリーを・・・
「あぁ 買うのはランジェリーじゃないけどね」
いらっしゃいませ・・声を掛けてくださるスタッフを制して、高梨さんが向かわれたのはナイトウェアのコーナーでした。
まるでドレスと間違えそうな・・・美しいオーガンジーやレースやトリコットのフルレングスのナイトウェア。
「いつ見ても、こちらの商品はきれいね」
「祥子さんは普段はこんな感じだろう」 高梨さんが手にされたのはシルクトリコットのシンプルなノースリーブのナイトウェアでした。
「ふふふ 良くお判りね」
「この肌は夜な夜なシルクと男の手で磨かれてるんだな ははは」
「もう いやな人」 わたくしが、艶話に近い会話に照れ笑いを返すころ、彼の手がハンガーに吊るされているものから一つの商品を選び出しました。
「これでサイズは大丈夫かな?」 ストレッチサテンにストレッチレースがふんだんに使われたフルレングスの桜色のネグリジェとガウンのセットでした。まるで花嫁が初夜に身に纏うような・・・ナイトウェアでした。
「ええ 多分」 付いているタグはいつもわたくしが選ぶサイズだったのです。
「試着させてもらおう。」 お願いします と高梨さんはショップのスタッフに声を掛けました。
「試着しなくても・・・大丈夫よ」 わたくしは小声で高梨さんに伝えました。
「いや、似合うかどうか確認したいね。着てみてくれ。」
「お客様 こちらのブースをご利用ください」 案内された試着室はスペースをゆったり取った場所でした。 有無を言わせぬ高梨さんの視線に押されて、わたくしはバックストラップのパンプスを脱ぐと、試着室に入ったのです。
「お着替えが済まれましたら、お声がけくださいませ。」 慇懃に頭を下げたスタッフと共に高梨さんも試着室から出てゆきました。
わたくしは、ガーターストッキングとパンティだけの姿になり・・・ネグリジェを身に付けました。優しい色合いなのに・・・胸から腰までのラインだけをくっきりと浮かび上がらせる・・・インポートならではのセクシーな造りです。
そして、ふんわりと優しいセットのガウンをまとうと・・・ブースの外に向かって声を掛けたのです。
「祥子用に探して来たんだよ。」
「・・・ありがとう・・ござい・ま・す」 わたくしは恥辱を与える道具に対する行為なのに・・・思わず御礼の言葉を口にしてしまいました。
パリ。ずっとご連絡もしないまま3月の初旬ごろにいらした場所のはずなのに、まだわたくしを思っていて下さったことが嬉しかったのです。
「随分と素直だな。」 高梨さんは目の前のカップの冷たいコーヒーを飲み干しました。
「本当だったんですね。」 わたくしからの連絡を待っていた事・・・そして少なくともわたくしのことを考えていて下さった事は。
「嘘なんか吐かないさ。」 ほんの短い言葉なのに・・・深く響く高梨さんの声。
彼を見つめてこくん・・と一つ頷くわたくしに、首輪の鈴がり・・りん・・と音色を添えるのです。
「さ ここの桜は飽きたから、桜並木でも散歩しようか。」
「はい」 日が翳りはじめたテラス席はほんの少し寒くなってきていたのです。
「コートの下に何を着てきたんだ? 見せてごらん」
「これですわ」 わたくしはコーヒーの最後の一口をいただくと、膝掛けを畳み・・・コートの釦を外して、黒でまとめたニットとデニムスカートの装いをお見せしたのです。
「そうか。じゃぁ、散歩の前に一軒買い物に付き合ってくれ。」 伝票を掴むと先に立って、ショップの並ぶ建物の中へと歩いて行かれたのです。
春物のあでやかな色の商品が並ぶショーウィンドウを眺めながら、彼がわたくしを連れていったのはインポートランジェリーの専門店でした。
「こちら?」 この方がランジェリーを・・・
「あぁ 買うのはランジェリーじゃないけどね」
いらっしゃいませ・・声を掛けてくださるスタッフを制して、高梨さんが向かわれたのはナイトウェアのコーナーでした。
まるでドレスと間違えそうな・・・美しいオーガンジーやレースやトリコットのフルレングスのナイトウェア。
「いつ見ても、こちらの商品はきれいね」
「祥子さんは普段はこんな感じだろう」 高梨さんが手にされたのはシルクトリコットのシンプルなノースリーブのナイトウェアでした。
「ふふふ 良くお判りね」
「この肌は夜な夜なシルクと男の手で磨かれてるんだな ははは」
「もう いやな人」 わたくしが、艶話に近い会話に照れ笑いを返すころ、彼の手がハンガーに吊るされているものから一つの商品を選び出しました。
「これでサイズは大丈夫かな?」 ストレッチサテンにストレッチレースがふんだんに使われたフルレングスの桜色のネグリジェとガウンのセットでした。まるで花嫁が初夜に身に纏うような・・・ナイトウェアでした。
「ええ 多分」 付いているタグはいつもわたくしが選ぶサイズだったのです。
「試着させてもらおう。」 お願いします と高梨さんはショップのスタッフに声を掛けました。
「試着しなくても・・・大丈夫よ」 わたくしは小声で高梨さんに伝えました。
「いや、似合うかどうか確認したいね。着てみてくれ。」
「お客様 こちらのブースをご利用ください」 案内された試着室はスペースをゆったり取った場所でした。 有無を言わせぬ高梨さんの視線に押されて、わたくしはバックストラップのパンプスを脱ぐと、試着室に入ったのです。
「お着替えが済まれましたら、お声がけくださいませ。」 慇懃に頭を下げたスタッフと共に高梨さんも試着室から出てゆきました。
わたくしは、ガーターストッキングとパンティだけの姿になり・・・ネグリジェを身に付けました。優しい色合いなのに・・・胸から腰までのラインだけをくっきりと浮かび上がらせる・・・インポートならではのセクシーな造りです。
そして、ふんわりと優しいセットのガウンをまとうと・・・ブースの外に向かって声を掛けたのです。
12 2006 / 05
「ああ お仕置きだよ。まずはこれからだ。」 高梨さんが差し出されたのは、綺麗な桜色の・・・大型犬用の首輪でした。
「これからあなたのお部屋へ?」 ここは春の日差しが降り注ぐ桜の庭園を望むカフェのテラス席です。それぞれのテーブルが離れているとはいえ・・・まさかここで<お仕置き>をはじめるとは思えませんでした。
「いや、今日は祥子さんと桜を見る約束だからね。部屋には行かない。さ、ここで着けなさい。」
「・・・だめ」 周囲に人がいないとはいえ、眼前の庭園からこのテーブルはすぐに見つけられるのです。
「自分ではできないのか?」 犬の首輪・・・そのものの意味する内容を知っている人なら・・・一目でわたくしのプライベートな秘密を知られてしまうアクセサリー。
「パリのフォーブル・サントノーレで見つけた。あまりに優しく儚い薄紅があの時の祥子さんのうなじを思い出させてね、思わず買ってしまった。」 わたくしが逆らえなくなる深くて甘い声が・・・まるで桜の香りのようにわたくしを酔わせるのです。
「着けなさい。」
「・・・ぃやぁ」 二人きりの夜の帳の下なら素直に従っていたかもしれません。でも、今は・・・ここは・・・。
「祥子」
ふるふるとわたくしは弱々しく首を横に振り続けたのです。
「仕方ないね。僕が着けてあげよう。そのかわり、もう一つお仕置きが加わるからね。」 そうおっしゃると小振りなバックルからベルトを外した桜色の首輪を・・猿臂を伸ばしわたくしの首に巻き付けたのです。
「ぁぁ・・ゆるして・・・」
「だめだよ。僕に連絡をしてこなかった罰だ。今日は僕のパリ土産を身に付けてこの午後を一緒に過ごすんだ。」
美しい桜色に染められた細身の革は、上品な色合いのゴールドのバックルとリードを繋ぐ金具のところに小さな鈴が一つだけ着いておりました。いやいやと・・・首を振るわたくしの動きにつれて鈴はり・りん・・とあえかな音を奏でるのです。
「ふふ 似合うね。思った通りだ。祥子の白い肌にはぴったり合う。」 先ほど本を読まれていた時のようにシートにもたれかかり、眼を細めてわたくしをご覧になるのです。
「・・・はずかしいわ」 襟がV字に開いた黒のシルクニットは、スプリングコートにすっぽりと隠れて・・・黒のロングヘアを背景に首もとの白い肌と桜色とゴールドが優しい妖しさを奏でているのでしょう。
ほっそりと作られた上質な首輪は軽く・・・そして肌への感触も柔らかく・・・ちょっとアバンギャルドなアクセサリーのようにも見えました。
「これもあるんだけどね」 じゃ・・ら・・ 高梨さんがエディバウワーのジャケットのポケットからつかみ出したのは、桜色の革の引き手のついたゴールドの鎖のリードでした。
「だめ・・・」 まさかリードを着けて鎖を引いて歩こうなんておっしゃるつもりは・・・
「わかっているよ。これは、後のお楽しみさ」 リードを見て少し青ざめたわたくしの表情がわかったのでしょう。でも、こんなリードはペット用としてトレンドではないのです。とすれば、もしかして・・・。
「痛いのか?」 首輪の縁に指を這わせていたわたくしに、高梨さんが少し心配そうに声を掛けてくださいました。
「いいえ そんなことは。あまりに滑らかなのでつい・・・」 辱める為のアクセサリーにうっとりと触れ続けているわたくしを見とがめられた様に思えて、思わず眼を伏せてしまいました。
「これは人間用だから痛くはないと聞いたんだがな」
「人間用?」
「ああ フォーブル・サントノーレにひっそりとあるその手の専門店で見つけたものだ。」 わたくしはてっきり、あの通りにあるペットショップで通りすがりに見つけられたものなのだとばかり思っていたのです。パリにあるボンデージのそれもひっそりと上顧客だけを待つ専門店・・・高梨さんはわざわざそこを訪れて・・わたくしのためにこれを求めてくださったのです
「これからあなたのお部屋へ?」 ここは春の日差しが降り注ぐ桜の庭園を望むカフェのテラス席です。それぞれのテーブルが離れているとはいえ・・・まさかここで<お仕置き>をはじめるとは思えませんでした。
「いや、今日は祥子さんと桜を見る約束だからね。部屋には行かない。さ、ここで着けなさい。」
「・・・だめ」 周囲に人がいないとはいえ、眼前の庭園からこのテーブルはすぐに見つけられるのです。
「自分ではできないのか?」 犬の首輪・・・そのものの意味する内容を知っている人なら・・・一目でわたくしのプライベートな秘密を知られてしまうアクセサリー。
「パリのフォーブル・サントノーレで見つけた。あまりに優しく儚い薄紅があの時の祥子さんのうなじを思い出させてね、思わず買ってしまった。」 わたくしが逆らえなくなる深くて甘い声が・・・まるで桜の香りのようにわたくしを酔わせるのです。
「着けなさい。」
「・・・ぃやぁ」 二人きりの夜の帳の下なら素直に従っていたかもしれません。でも、今は・・・ここは・・・。
「祥子」
ふるふるとわたくしは弱々しく首を横に振り続けたのです。
「仕方ないね。僕が着けてあげよう。そのかわり、もう一つお仕置きが加わるからね。」 そうおっしゃると小振りなバックルからベルトを外した桜色の首輪を・・猿臂を伸ばしわたくしの首に巻き付けたのです。
「ぁぁ・・ゆるして・・・」
「だめだよ。僕に連絡をしてこなかった罰だ。今日は僕のパリ土産を身に付けてこの午後を一緒に過ごすんだ。」
美しい桜色に染められた細身の革は、上品な色合いのゴールドのバックルとリードを繋ぐ金具のところに小さな鈴が一つだけ着いておりました。いやいやと・・・首を振るわたくしの動きにつれて鈴はり・りん・・とあえかな音を奏でるのです。
「ふふ 似合うね。思った通りだ。祥子の白い肌にはぴったり合う。」 先ほど本を読まれていた時のようにシートにもたれかかり、眼を細めてわたくしをご覧になるのです。
「・・・はずかしいわ」 襟がV字に開いた黒のシルクニットは、スプリングコートにすっぽりと隠れて・・・黒のロングヘアを背景に首もとの白い肌と桜色とゴールドが優しい妖しさを奏でているのでしょう。
ほっそりと作られた上質な首輪は軽く・・・そして肌への感触も柔らかく・・・ちょっとアバンギャルドなアクセサリーのようにも見えました。
「これもあるんだけどね」 じゃ・・ら・・ 高梨さんがエディバウワーのジャケットのポケットからつかみ出したのは、桜色の革の引き手のついたゴールドの鎖のリードでした。
「だめ・・・」 まさかリードを着けて鎖を引いて歩こうなんておっしゃるつもりは・・・
「わかっているよ。これは、後のお楽しみさ」 リードを見て少し青ざめたわたくしの表情がわかったのでしょう。でも、こんなリードはペット用としてトレンドではないのです。とすれば、もしかして・・・。
「痛いのか?」 首輪の縁に指を這わせていたわたくしに、高梨さんが少し心配そうに声を掛けてくださいました。
「いいえ そんなことは。あまりに滑らかなのでつい・・・」 辱める為のアクセサリーにうっとりと触れ続けているわたくしを見とがめられた様に思えて、思わず眼を伏せてしまいました。
「これは人間用だから痛くはないと聞いたんだがな」
「人間用?」
「ああ フォーブル・サントノーレにひっそりとあるその手の専門店で見つけたものだ。」 わたくしはてっきり、あの通りにあるペットショップで通りすがりに見つけられたものなのだとばかり思っていたのです。パリにあるボンデージのそれもひっそりと上顧客だけを待つ専門店・・・高梨さんはわざわざそこを訪れて・・わたくしのためにこれを求めてくださったのです
11 2006 / 05
「約束は違えませんわ。」
「その言葉、この前も聞いたよ。祥子さんが約束を守る女性だっていうのは今日良くわかったよ。よく考えたら、待ち合わせをするのは初めてだったね。」
そう言われればそうでした。一度目も、二度目も・・・ほとんど偶然同じ場所に居合わせただけの関係だったのですから。
「日本に戻られてもう随分になるのですか?」
「帰国したっていう言葉の意味ならそうだね。」
「ん?」
「戻って間もなく東京コレクションがあったから、自分の時間が持てる様になってからというなら、まだ3日も経ってないよ。」
3日前、わたくしに久方ぶりのメールをいただいた日です。
「そうだったんですか。」
「相変わらず祥子さんは僕に連絡してくれないからね。」 少し拗ねたようなおっしゃり様です。
「そんなこと、お忙しいと思っていたからですわ。それに、いつこちらに戻られるかもわかりませんし。ご迷惑になってはいけないと思ったものですから。」
「言い訳だね。 僕と話したいと思わなかった?」
「・・・時折は」 年が改まってから・・・高梨さんのことは思い出しておりました。
わたくしが、4人の男性から年越しに受けた仕打ちは、もとに戻ろうとする経過でさえもわたくしのことを酷く苛みました。
このような事・・・とても口に出来ることではありません。秘して独りで耐えるしかなかったからです。
わたくしが存じ上げている男性の方達の中でも、高梨さんならその仕打ちさえも、単なる事実としてなんということなく受け止めて下さる予感がしたのです。堪え難いとさえ思われる責めが24時間つづく日々に、救いの手を幾度となく求めそうになってしまいました。
でも同時に、たとえメールでも電話でも・・・どんなに秘密にしておきたいと思っても、きっとこの方ならほんの少しの声音の変化から、翳りを失ったはしたない身体のことを気づかれてしまいそうだったからです。
「素っ気ない言い方だね。」
「ふふふ そんな風におっしゃっても、決してわたくしの側に居て下さることなんてできないのに。」
「そういう問題じゃないさ。10年前とは時代が違うんだ。たとえ地球の反対側にいてもなんということなくメールのやり取りは出来るんだ。僕を求めているならそのくらいしてもバチは当たらないだろう。」
偶然に出逢った第九のコンサートホールから3日間。高梨さんの部屋で過ごす間、幾度となく言われ続けていたのです。『どんな些細なことでも良いからメールをしておいで。電話でもいい。旅の空の1人のベッドで楽しみにしているからね。』
「ごめんなさい。ご連絡をしないで。でも、いつものように過ごしてこられたのでしょう。NYでもミラノでも、パリでもロンドンでも。」 その土地々々に馴染みの女性が居ると、あの日寝物語に聴かせてくださっていたのです。
「いや。今回は真面目に過ごしていたんだ。」
「・・・うそ」
「嘘なんか吐かないさ。祥子さんの面影を浮かべながら他の女を抱くのがどんなに虚しいかは、前回のコレクションで身にしみてるからね。 たまに女と過ごしたのは、まぁ別れ話をした時だけだね。」
もう何年もお独りのままでコレクションカメラマンとして世界を旅しているこの方が・・・いったい何人の女性と別れ話をなさっていらしたのでしょう。
「もう、ご冗談ばかり。」 もしおっしゃっていることが本当なら・・・わたくしは一瞬でもそう考えた子供のようにしょった自分を笑う様に、そうお答えしたのです。
「冗談じゃないんだよ。祥子さん。」 ゆったりともたれかかる様に腰掛けていた姿勢をすっと・・・戻されます。
「僕に淋しい想いをさせたお仕置きをしなくちゃね。」
「えっ・・・お仕置き?」 高梨さんのひと言が・・・麗らかな桜の午後の彩りを一転させたのです。
「その言葉、この前も聞いたよ。祥子さんが約束を守る女性だっていうのは今日良くわかったよ。よく考えたら、待ち合わせをするのは初めてだったね。」
そう言われればそうでした。一度目も、二度目も・・・ほとんど偶然同じ場所に居合わせただけの関係だったのですから。
「日本に戻られてもう随分になるのですか?」
「帰国したっていう言葉の意味ならそうだね。」
「ん?」
「戻って間もなく東京コレクションがあったから、自分の時間が持てる様になってからというなら、まだ3日も経ってないよ。」
3日前、わたくしに久方ぶりのメールをいただいた日です。
「そうだったんですか。」
「相変わらず祥子さんは僕に連絡してくれないからね。」 少し拗ねたようなおっしゃり様です。
「そんなこと、お忙しいと思っていたからですわ。それに、いつこちらに戻られるかもわかりませんし。ご迷惑になってはいけないと思ったものですから。」
「言い訳だね。 僕と話したいと思わなかった?」
「・・・時折は」 年が改まってから・・・高梨さんのことは思い出しておりました。
わたくしが、4人の男性から年越しに受けた仕打ちは、もとに戻ろうとする経過でさえもわたくしのことを酷く苛みました。
このような事・・・とても口に出来ることではありません。秘して独りで耐えるしかなかったからです。
わたくしが存じ上げている男性の方達の中でも、高梨さんならその仕打ちさえも、単なる事実としてなんということなく受け止めて下さる予感がしたのです。堪え難いとさえ思われる責めが24時間つづく日々に、救いの手を幾度となく求めそうになってしまいました。
でも同時に、たとえメールでも電話でも・・・どんなに秘密にしておきたいと思っても、きっとこの方ならほんの少しの声音の変化から、翳りを失ったはしたない身体のことを気づかれてしまいそうだったからです。
「素っ気ない言い方だね。」
「ふふふ そんな風におっしゃっても、決してわたくしの側に居て下さることなんてできないのに。」
「そういう問題じゃないさ。10年前とは時代が違うんだ。たとえ地球の反対側にいてもなんということなくメールのやり取りは出来るんだ。僕を求めているならそのくらいしてもバチは当たらないだろう。」
偶然に出逢った第九のコンサートホールから3日間。高梨さんの部屋で過ごす間、幾度となく言われ続けていたのです。『どんな些細なことでも良いからメールをしておいで。電話でもいい。旅の空の1人のベッドで楽しみにしているからね。』
「ごめんなさい。ご連絡をしないで。でも、いつものように過ごしてこられたのでしょう。NYでもミラノでも、パリでもロンドンでも。」 その土地々々に馴染みの女性が居ると、あの日寝物語に聴かせてくださっていたのです。
「いや。今回は真面目に過ごしていたんだ。」
「・・・うそ」
「嘘なんか吐かないさ。祥子さんの面影を浮かべながら他の女を抱くのがどんなに虚しいかは、前回のコレクションで身にしみてるからね。 たまに女と過ごしたのは、まぁ別れ話をした時だけだね。」
もう何年もお独りのままでコレクションカメラマンとして世界を旅しているこの方が・・・いったい何人の女性と別れ話をなさっていらしたのでしょう。
「もう、ご冗談ばかり。」 もしおっしゃっていることが本当なら・・・わたくしは一瞬でもそう考えた子供のようにしょった自分を笑う様に、そうお答えしたのです。
「冗談じゃないんだよ。祥子さん。」 ゆったりともたれかかる様に腰掛けていた姿勢をすっと・・・戻されます。
「僕に淋しい想いをさせたお仕置きをしなくちゃね。」
「えっ・・・お仕置き?」 高梨さんのひと言が・・・麗らかな桜の午後の彩りを一転させたのです。