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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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22 2006 / 07
「でも、タオルもありませんし、こんなに濡れていたら畳をだめにしてしまいます。このまましばらく雨宿りしまし・・・」 この敷地にある以上、ホテルの施設なのです、なんの許可もなく建物を利用することにわたくしは抵抗を憶えたのです。
 
ガラガラガッシャ・・・ン・・ガラッシャン・・・・ 
「きゃっ・・・」 強い光と耳を聾するような音が同時に・・そして立て続けに襲ったのです。隣に戻られた田口さんに、わたくしは思わず縋り付いてしまいました。
「大丈夫ですよ、祥子さん」 わたくしを強く抱きしめた田口さんは耳元で・・・やさしく・・声を掛けてくださったのです。左手は、レースのフレアスカートに包まれた腰に這わせながら。
「ごめんなさい、わたくしったら・・・」
ガラガラガッシャ・・・ン・・ 
「きゃ・・」 不用意に田口さんに預けてしまった身体を引き離そうとしたときです。先ほどよりひと際大きな雷が・・・三重塔の近くに落ちたのです。
二人の周囲に控えめとはいえあった照明が、ふっと・・・一斉に消えました。
「やっ・・・」 都心の安全なホテル内の庭園にいるのです。なにも怖がる必要などないのに、それでもわたくしは闇に包まれることに恐怖心を憶えてしまったのです。
我が身を引きはがそうとしていた田口さんの胸に、ふたたび縋り付いてしまったのです。

「大丈夫です。ホテルの本館は停電していませんから。庭の電気系統だけがショートしただけでしょう。雨が小降りになれば直に修復されます。それに、ほら・・・」
田口さんが指差された先の地面に、それこそほんとうにとびとびですが非常用の明かりが・・・まるで蛍火のようにうすくぽっとついたのです。
「ごめんなさい、あんなに酷い雷。びっくりしてしまって・・・」 まだ雷の音は去っていませんでした。時折思い出した様に漆黒の空に稲光が走り、数秒後には大きな雷鳴がいたします。その間隔は少し開きはしたものの、まだ充分に大きなものでした。
雨は、一層強く降り続いています。
ホテルを出た時のあのまとわりつくような湿度は、この雨の予兆だったのでしょう。
「ほんとうに、ごめんなさい。」 
「祥子さん、そちらに行ったら濡れますよ。」 身体を離そうとしたわたくしの腰を、田口さんの腕は許してはくださいませんでした。がっしりと抱かれた身体は身動きもままならないほど彼の身体に密着していたのです。
「おねがい・・・」
「さ、中に入りましょう。食事をしている時から我慢してたんです。さっき腕を組んで歩いた時に触れた祥子さんのバストの感触で年甲斐もなく発情してしまいました。」
「やぁぁっ・・・・」 田口さんの左手は一旦は離したわたくしのフレアスカートを再びたくし上げはじめていたのです。

 
「どうせ誰も来ませんから、ここででもいいですよ。雨に閉じ込められた野外でこんな風に身体を密着したまま祥子さんを嬲るのも一興です。」 右手はわたくしの肩に・・・傾げた首はわたくしの右耳を舐るかのような至近距離で・・・淫らな提案を口にするのです。
「だめっ・・・」 バタバタと叩き付けるような雨の音が、わたくしの抗いの言葉を打ち消してゆくようです。
「ふふ、今夜もガーターなんですね。それなら余計ここででも充分ですよ。あぁ、あの夜と同じTバックで、こんな仕事関係の集まりの時でさえこんな扇情的なランジェリーを身につけるのですか祥子さんは。」
「ちがう・・の・・・あぁぁっ・・・」 清純なほんのりとピンクがかったパールのランジェリーセットは、今日の慎ましやかな装いのために選んだものです。パンティのカットは大胆だったけれど・・・決して淫らな目的で選んだわけではありません。
すっぽりとスカートの中に入り込んだ田口さんの手はわたくしの露になったヒップを上質な食材の鮮度をたしかめるかのように・・・撫で回すのです。
落ちてくる雨同士がぶつかるあまりの激しさに・・・霧状になった水滴がわたくしの太ももにも・・・スカートをたくし上げられたむき出しの腰にも・・・まるで好色な男性の視線のようにまとわりつきます。

 
「あの時も、窓外に淫らな姿を晒されただけで蜜を滴らせていましたね。祥子さんは露出好きなのかな。誰も来ないとはいっても、こんなとこで下半身を晒して感じてるんですか?」
「いやぁ・・・ちがうわ・・・」 あの時は・・・ホテルの26階でした。周囲にほとんど同じ高さの建物のない・・・メインダイニングの窓にわたくしを括ったのはこの方なのです。
「私はね、結構好きなんですよ。このままここで祥子さんにこれを入れたくってうずうずしてるんです。」 そう仰りながらわたくしの腹部に押し付けられた塊は・・・もうすっかり猛々しく昂っておりました。
「夜目にも祥子さんの肌ならまるで蛍の光みたいに白く光ってみえるでしょうね。その腰を露にここで照明が回復するまで嬲らせてくれるんですか?」 あぁ・・・わたくしったら・・・なんて不用意に・・・この方とご一緒してしまったのだろう。つい先ほどまであんなに紳士的だったのに。
「だめ・・・っ・・」 ふるふると首を振るわたくしの後頭部を押さえて、今度は最初から淫らな口づけをなさったのです。
「挑発したのは、祥子さんです。その声で、その慎ましやかな姿で、Gカップのバストの感触で、淫らなあなたの体臭で。このまま何もなしでは帰しません。ここで立ったまま犯しますか?それとも中に入りますか?」
「おねがい・・・中で・・・」 
ガラガラ・・ガシャ・・ン・・ わたくしを抱きしめたまま建物の中に連れてゆく田口さんの向こう・・・庭園の中へ・・またひどく近くに雷が落ちたのです。
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21 2006 / 07
右手に池が左手に水路のある歩道は、進むほどに舞う蛍の数が増えてゆきます。夢幻・・・という言葉さえ思い浮かぶほどでした。
「飼育しているそうだが、これほどとはね。」 乱舞する光が田口さんとわたくしの周囲をとりまくのです。
「ご一緒していただいてよかったわ。1人だと、せっかくの感動を思う存分味わえないでしょう。ありがとうございます。」
「こんなに喜んでいただけてよかったです。」 田口さんのお髭の中の唇から、白い歯がにこやかに覗いていました。
「ずっと以前に穂高で見た時よりたくさん飛んでるみたいだわ。」
「穂高ですか。どなたとご一緒だったのかな。」
「ふふふ、そんなんじゃありません。学生時代の夏合宿でしたの。こんな庭園ではなくて、普通の田んぼのあぜ道でした。都会育ちだったものですから、あれほど沢山の蛍を見た事がなくて、とても嬉しかったことを覚えてます。」
蛍の時期は庭園をそぞろ歩くお客様も多い、と聞いていましたが今夜はこのひどい蒸し暑さのせいでしょうか・・・お客様の数もちらほらとしか見かけませんでした。
「夏合宿ですか。お若いころの祥子さんにもお逢いしてみたかったですね。」
「ふふふ、あのころはきっと可愛かったと思いますわ。」
「いまのほうが間違いなく魅力的でしょう。」
「お上手ね、田口さんは。」

 
大きな池を抜けても、左側を流れるせせらぎのせいでしょうか、蛍はまだ飛び交っておりました。わたくしが、田口さんを見つめて微笑んだところでひっつめてアップにした髪にカサッとなにかが触れたのです。
「祥子さん、動かないで。あなたの髪に蛍が止まってる。」 それが、蛍だったなんて。
「ほら、力強く光ってますよ。蛍も私の意見に賛成のようだ。
「もう、田口さんた・・っ」 蛍を驚かさないようにと田口さんを見つめたままだったわたくしの唇を・・田口さんが塞いだのです。
「ん・ん・・・っ」 エスプレッソの香りのキスは、強く・・わたくしを貪ったのです。
「・・ん・・もう・・だめですっ」 まだ周囲にいるかもしれない人をはばかって、左手で大きな彼の胸を押し返しながら、わたくしは小声で抗議したのです。
「あっ、蛍が飛んでいってしまったみたいですね」 もう、恍けて・・・田口さんたら。
「こんな悪戯をなさるからですわ。」 彼と唇を交わすのは、はじめてではありませんでした。でもこんな不意打ちを受けるとは思っていなかったのです。
「祥子さんがあんまり魅力的だからですよ。やっぱり十代のころの祥子さんよりも、いまの祥子さんの方が私は好き・・・」
バ・タ・バ・タタタタタタ・・・・ 田口さんの言葉を打ち消すほどに強い大粒の雨が突然落ちてきたのです。

 
「祥子さん、こっちです。」 傘も持ってはいなかったのです。ホテルの本館からはもう随分と離れておりました。わたくしは田口さんのおっしゃる方へと小走りに着いて行ったのです。
夕立でした。あっという間に雨は酷い降りになってきました。
それでも、二人は酷く濡れる前に茅葺きの建物の前にたどり着けたのです。大きく張り出した軒下にわたくしたちは避難したのです。
「ここで雨宿りしていましょう。中に入れればいいんですけどね。」
「何ですの?ここは」 激しい雨の音に、声を少し大きくしなければ田口さんに届かないほどでした。
「たしかお茶室だったと思うんだが。」 いくつかの戸をカタカタと動かしていた田口さんは、やがて一つ・・・開く戸を見つけたようでした。
「ここから入れそうです。濡れますから中へ入りましょう」 たしかに仰る通りなのです。足元の玉砂利から跳ねる雨粒は、わたくしのストッキングを酷く濡らしておりました。
20 2006 / 07
「この後はどうなさるんですか?」 視線の先の庭園はすっかり宵闇に沈んでおりました。ところどころに設置された灯籠が、昼間見た回遊路をやさしく照らしているようです。
「お席を変えられるのでしたら、バーカウンターを予約いたしますが」 流石に気が利くところは、田口さんの後輩です。
「いえ、せっかくなので蛍のお庭を楽しませていただきますわ。」
「そうですね。なかなか見事ですから、ぜひいらしてください。私達従業員はつい見そびれていて・・・紺屋の白袴って感じですかね。」 どうぞ、ごゆっくりなさってください 呼びにきたサービスチーフに耳打ちされて、杉山さんはキッチンに戻って行かれました。
フレンチ・ローストの珈琲がコースの最後を引き締めてくれました。

 
「さぁ、蛍を観に行きましょう。」 田口さんがわたくしの椅子を引いてくださいます。
そうでした。蛍の仄かな明かりが美しく見える時間まで・・・と、お食事を誘っていただいていたのでした。
「田口さん、あのお宅はよろしいんですか。せっかくのお休みですのに、ご家族がお待ちになってらっしゃるんじゃありませんの?」 2万坪と言われる庭園の一部とはいえこれから散歩をしようと言うのです。まだ1時間ほどはお時間をいただくことになるでしょう。
「美貴様から何もお聞きではないんですか?」 実際のところ美貴さん達と田口さんがどれほど親しいのかは、わたくしにはわかりません。ただ、あの場に・・・とてもプライベートなはずの淫媚な場に招き入れたのですから、秘密を共有することを許せるほどの関係だということくらいは感じられました。
「ええ」
「私は独りなんですよ。5年前に離婚しましてね。いまは気ままな一人暮らしです。」
「そうでしたの。申し訳ありません、立ち入ったことをお聞きして。」
「いえいえ、これで安心して蛍の庭へエスコートさせてくださいますか?」
「ええ、それでしたら安心して、ご一緒させていただきますわ。」
わたくしは差し出された田口さんの左腕に軽く手を添えると、お庭へ向かう扉の外へと歩き出していたのです。

 
庭園に向かう扉を開けたとたん、湿度の高い空気がむっと押し寄せて参りました。お食事をしていた1時間ほどの間に、天候が少しかわっていたのかもしれません。雨が落ちてくる気配はありませんでしたが、月の姿も全く見えなくなっていたのです。
星もない真っ暗な空は、庭園内の足許を照らす灯りさえ薄く霞ませているようです。
気をつけて、ゆっくりと歩みを進めてくださる田口さんのコットン・ジャケットにわたくしは腕を絡めておりました。
「あっ・・ほたる・・・」 眼の前をほのかに緑がかった光が・・・1つよぎりました。わたくしは、思わず田口さんの袖を引いてしまったのです。
「どれ?」 最初の蛍火は、田口さんの視線が捉える前にふっと消えてしまいます。
「・・っ・・また・・・」 一つ・・またひとつ。文字通りの蛍光色の筆が雅な仮名文字を描くかの様に動くと・・・ふっと消えてゆくのです。
「きれい・・・」 ため息のように漏らした一言に、田口さんはやさしく微笑んでくださったのです。
「三重塔から回ろうと思いましたが、気が変わりました。池のほとりの方から歩きましょう。」 分岐した回遊路を、田口さんはまっすぐに歩き出したのです。
19 2006 / 07
「お皿をお下げしてもよろしいでしょうか。」 サービスの方の声にわたくしはピクンと身を震わせてしまいました。うやうやしく礼をして田口さんのお皿を下げる姿に、わたくしは手を止めたままだった最後のお肉を・・・口にしたのです。
「ごちそうさまでした。とても美味しいお料理でしたわ。」 斜めに揃えられたカトラリーを見て、わたくしのお皿にもサービスの方が手を伸ばされたのです。
窓に向かってしつらえられた二人きりのテーブルは、周りの席に他のお客様がいらしても閉じられた空間をつくっておりました。田口さんのつくる濃密な空気が、わたくしを少し息苦しく・・・深く酔わせていたのです。
会話の内容も二人の間の緊張もご存知ないサービス・スタッフが、淫媚な結界を破ってくれていました。
綺麗に片付けられたテーブルに、今夜のデザートが届けられました。
「恐れ入ります。田口様、いま、シェフがご挨拶にまいります。」 サービス・チーフはトレイを手にそう言い置いて下がって行かれました。
 
「デザートも繊細ね。パティシエも田口さんのご存知の方?」 デザートはフルーツのタルトに、まるで薔薇の花のように飴細工をあしらったものでした。柔らかな香りがをテーブルを華やぎに包みます。
「いえ、パティシエは最近こちらに来た女性だそうですよ。今日は逢えなかったんですが、このデザートを見れば人気が高いことはわかりますよ。」
「いらっしゃいませ。先輩がこんなに素敵な女性とご一緒だとは思いませんでした。シェフの杉山です。よろしくお願いします。」 田口さんがデザートのことを語り終える前に噂のシェフがいらっしゃいました。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったですわ。」 田口さんとは正反対の・・・細身なのにしなやかな強さを感じさせる男性でした。黙っていたらただの優男に見えかねないのですが、そのきっぱりとした口調はこのレストランのチーフとしての実力を窺わせたのです。
「こちらは、うちのお客様で・・・。」
「加納と申します。よろしくお願いします。」 田口さんは<祥子>としかわたくしの名をご存知なかったのです。ご紹介してくださるのに、困ってらしたのを不自然じゃないタイミングでフォローできたかしら。
「加納様。これからは先輩のところだけでなく、ここにもどうぞお越しください。魚料理なら、負けませんから。」 にっこり笑った顔は、明るく自信に満ちていました。
「お魚だけじゃなくて、他のお料理もとても美味しかったわ。時々、お邪魔させていただきますね。」
「杉山君、私のお客様を横取りするのはやめてもらおう。」 田口さんの口調は全く怒ってなどいないのに、挑戦的な言葉を吐く後輩にしっかりと釘を刺していることはわかるのです。
「そんなつもりはないですよ。先輩のお客様を横取りするような実力は私にはまだないです。でも、こんなに魅力的なお客様にはぜひもう一度お逢いしたいですからね。だから<お願い>してるんです。」
「もう、どちらのお店にもまたお伺いいたしますわ。」 仕方なくわたくしはそうお返事させていただきました。
「それじゃ、その時も私がエスコートしましょう。」 さりげなく田口さんがシェフからわたくしをカードします。
「ええっ、先輩はいいですよ。加納様お1人でもどうぞいらしてください。」 
「ありがとうございます。」 わたくしは、杉山シェフに微笑みかけながらお答えしたのです。
でも、本当に仲がお宜しいのです。このお二人は。
18 2006 / 07
「牛リブロースのローストです。」 わたくしたちの前にメインディッシュが運ばれてきました。サービス・チーフは簡単にお料理の説明をすると、グラスにワインを満たしてゆきます。
「美味しそうですね。」 新鮮なサラダも添えられています。柔らかそうな霜降りのお肉と洋山葵のソースが見事なコントラストを描いていました。
「いただきましょう。」 田口さんは早速にカトラリーを手にとられたのです。
 
「先ほどシェフはお魚が得意だっておっしゃいましたけれど、お肉もお上手だわ。火の通し具合が絶品ですね。」 舌の上で牛特有の甘みを広げながら・・・蕩けてゆくソテーの味は・・・官能的でさえありました。
「これは私見ですけれど、嗜好というのは一定の方向性を持つようですね。」 わたくしの心の中に芽生えたたった一言を瞬時に読み取ったかのように・・・田口さんの視線に熱が籠りました。
「味の嗜好が極めて似ているということは、女性の好みが似ていることも多いのですよ。両方とも五感を駆使するものだからなのですかね、祥子さん。」 艶っぽいというわけではないはずなのに、田口さんの視線はわたくしの身体の芯を騒がせるのです。
「もう。田口さんたらそんなお話ばっかり。」 わたくしは田口さんに・・・こんな場だからこそなのですが・・・責めのような言葉を諌めるように軽く眉をしかめさえしてみせたのです。
「私の作る料理に感じたのと同じテイストを、ここのシェフの皿に感じてらっしゃるのだとしたら、それは祥子さんが彼好みの女性だということなんですよ。」 逸らしたはずの話題に・・・わたくしは自ら田口さんを引き寄せてしまったようです。
 
「もう、またそのお話ですの。」
「デザートになればやってくるでしょう。私と一緒の祥子さんを見て、シェフが悔しそうな表情をするのが見物です。」 調理人の先輩として・・・いえ、男の先輩としてのシェフの優越感がそこには滲み出ていました。
「わたくしでは役不足かもしれませんわ。」 田口さんは、一流ホテルのグランシェフなのです。今日はわたくしと同席しているから、こうして気をつかってくださっているのでしょう。女優さんやタレントさんなど、本当に素敵な女性には数多く出逢われているはずですもの。
「私は、味覚には忠実な男です。見事な味は自分自身の手で再現できるまで決して忘れる事なんて出来ません。同じ様に、一度お逢いした見事な女性のことも、ずっと忘れることなんて出来ないものなんですよ。」
なんという・・・告白なのでしょうか。こんな風に・・・仰られたのはもしかしたら高梨さん以来かもしれません。
わたくしは、息を飲んでいるだけで、何もお答えすることなど出来ませんでした。
「いまも、そのパールを手で奪って祥子さんの手首を真珠の連なりで縛り上げたいと考えているんです。私の店ならば、その黒いトップスを私の作るメインディッシュと引き換えに取り上げるのに・・・と妄想しています。」
そんな・・・お食事をしている席なのに・・・この方はそんなことを考えてらっしゃるなんて。わたくしは思わず、ナイフを持つ手を止めてしまいました。
「申し訳ありません。美貴様の想い人でもある祥子さんに、いまお話ししたような事が出来る訳はありません。私の戯れ言だと、忘れてください。」

 
年末のお席の石塚さんとは違って、田口さんはわたくしに指一本触れるわけではないのです。なのにこの方は、一緒にお食事をして・・・お話をするだけでストッキングを破る以上の・・・エロティックなシチュエーションにわたくしを投げ入れたのです。
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