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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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スクリーンの中で少年を気遣う母は、自ら彼の前から姿を消し・・・それでも再び少年の元へ戻ってきてしまうのです。
そして彼女は、それまで身体を交わす事のなかったわが息子にはじめて身を任せるのです。頸動脈を切るナイフを手にして・・・。
母の亡骸を前に・・・乞われるまま両親の元に戻った少年は、一夏で両親を亡くし・・・その絶望を性衝動へとすり替えてゆくのです。

エンドロールはオフホワイトの画面にワインカラーの文字で綴られておりました。
BGMもなく流れるエンドロールに、<G-7>にいたあの方は隣の奥様に急かされて・・・席を立ってゆかれたのです。わたくしの存在にとうとう気付くこともなく。
 
頬を伝う涙はまだ渇いてはおりませんでした。
でももう終わりです。左に置いたバッグの中から取り出したハンカチで、目頭と頬を軽く拭っても、涙は止まってはくれなかったのです。
上映時間が遅いせいもあったのでしょう。ほとんどのお客様は、エンドロールの間に席を立ってらっしゃいました。
なのに、わたくしの右隣の男性だけは動く気配もなくスクリーンに見入ってらっしゃるようでした。
 
客電が点いた時、わたくしはまだ立ち上がることが出来ないでいました。
俯いたまま、2階席のお客様が通路を降りてらっしゃる足音をいくつもやり過ごしたのです。
さすがに・・・もう、立たなくてはと思った時でした。
「大丈夫ですか?」 そう声を掛けてくださったのは、右隣の男性でした。
「ごめんなさい。」 あわてて立ち上がろうとしたわたくしの肩にほっそりとした手を置かれたのです。
「いえ、ゆっくりでいいですよ。大丈夫ですか?」
「・・・はい」 そう答えたあとから・・・わたくしの眦から涙が流れていたのです。
「・・っ・・もうし・・わ・け・ございません。」 閉館時間が迫っておりました。わたくしはバッグを手にすると、男性に寄り添われながら映画館を出たのです。
「気にしないで。少しお酒でもご一緒しませんか。怪しいものではないですから。」 パンプスを履いたわたくしよりもほんの少しだけ背の高い男性。身体に触れられているわけではないのに・・・彼の優しい声にわたくしは包まれていました。
「ありがとうございます。でも、もうこんな遅い時間ですし・・」 お1人で映画にいらしているからと言って、ご家族がないわけではないでしょう。落ち着いた物腰と半白の髪は40代後半から50代になるかどうかの雰囲気を漂わせていたのです。
「君の帰りを待っている人がいるなら引き止めないよ。私は気楽な一人暮らしだからね。君が落ち着くまで一緒にいるくらい、構わない。」 涙が止まらないわたくしを目立たないファサードに立たせたままで、落ち着いてこんこんと語る様に・・・少しづつ警戒心を解いていったのです。
「初対面ですのに・・お心遣いありがとうございます。・・っく・・でも、こんなわたくしでは・・ご迷惑を・・お掛けしてしまう・・わ」
「こんな夜は1人で居るもんじゃないよ。私に任せてくれるね。」
こくん・・と頷いたわたくしの手を取ると、映画館の前の通りを走るタクシーに手を上げたのです。
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「どうぞ。」 わたくしは、立ち上がりその方に通路をお開けいたしました。
会釈をしてわたくしの前を歩いてゆかれたその方は、一つ空けた奥の席に腰を下ろされました。
最初に目に入ったのは、男性が軽く組まれた足先のブラウンのローファーと靴下でした。
明るいウォルナット・ブラウンの靴にこっくりとしたマロン・ブラウンの靴下。その上に続くボトムは、一見グレーかと思うほどに彩度を抑えたサンド・ブラウンだったのです。
買われたばかりのプログラムを夢中でご覧になっていた男性のシャツは、ライトブルーにウォルナット・ブラウンと白のストライプが配されたものでした。
お好みになる方は多いけれど、なかなか上品に着こなす事が難しい<ブラウン・コーディネイト>を半白の髪の男性は理知的に爽やかにこなしてらしたのです。
つい、見とれてしまったわたくしに、何か?という表情で視線を向けられた男性のブラックメタリックの眼鏡さえこの方にはぴったりだったのです。
いいえ ごめんなさい 声を出さずに唇だけでそう答えて、スクリーンへ向けた視線の先に・・・わたくしはあり得ない方の姿を見つけてしまったのです。
 
その方は<G-7>の席に座ってらっしゃいました。そして隣には親しげな女性が、寄り添っていたのです。
いつの間に、いらしたのでしょうか。
昨年の春にお別れした・・・男性。わたくしが愛して、でも他の女性との結婚を選ばれた方でした。人ごみは苦手だと、よく口にされていたこの方を映画に誘うなら、こちらはきっと最適でしたでしょう。
以前お付き合いしていたときと同じに、ポップコーンとコーラを手にしたその横顔から、わたくしは目が離せなくなってしまったのです。
 

会場は暗くなり、スクリーンでは短い広告につづいて本編が始まりました。
濃やかな音の連なりが美しいフランス語に、陰影と接写を効果的に配した映像がテンポ良く続いてゆきます。
17歳の少年の久しぶりの両親との再会、父親の死、父親の遺した男としての性癖に向き合う少年の衝動・・・・そして少年がもっとも敬愛した母の衝撃的な告白「わたしを愛するなら、わたしのふしだらさまで愛しなさい」。
わたくしは、一生懸命物語を追わなくては・・・と念じておりました。
少年が宗教に守られた倫理観と、神聖で敬愛するべき対象だった母親が身を浸すアブノーマルで淫媚な世界との狭間で苦しみながらも、誰でもない母の存在に自らの性を刺激され、男として目覚めてしまう哀しさに心を殺してゆく・・・。
映像がエロティックに・・・セクシャルに・・・エスカレートするにしたがって、<G-8>の女性は、あからさまに<G-7>のその方にしなだれかかり・・・彼の手を取り・・・そして・・・。

 
わたくしは、いつのまにか映像が歪んでいることに気付いたのです。
声も出さず・・・ただ、涙だけがわたくしの頬を伝い落ちていたのです。
あの方とお別れをした後も、何人もの素晴らしい男性と出会い・・・いまわたくしは幸せです。
でも、あの方を失ったという喪失感だけは未だに消えてはいなかったのです。
わたくしなら決してしはしない・・・映画館の中での痴戯。あの方は、アブノーマルな性癖はお持ちでしたが、こういうことはお嫌いだったからです。
いまも、となりの・・・奥様の自由にさせながら強ばった表情を崩しもしない・・・スクリーンの明かりに浮かぶあの方の横顔に、わたくしは一気にお別れをしたあの時に引き戻されておりました。
梅雨も明けて、湿度の高い暑い毎日が始まったころ。
わたくしは仕事途中にあるポスターを見かけたのです。
<ジョルジュ・バタイユ> 
第一次世界大戦のころのフランスの思想家の名前が眼にとまったのです。難解で、エロティックなのに溺れきれない・・・。わたくしにとってそんな印象の作品を書かれる作家の名前でした。
彼の作品が映画化されたのなら、ぜひ観てみたいと思いました。
レイトショー上映のみ。21:20からの上映なら、仕事の時間を気にすることなく観にゆくこともできるでしょう。
この素敵な思いつきに、わたくしは強い日差しから逃れる様に、1階のエントランスのエレベーターへと向かったのです。

 
お仕事はさほど時間が掛からずにおわっておりました。いきつけのイタリアンで軽いお食事と、フルーティな白ワインをいただいてから、陽も落ちて涼しくなってきた通りをウインドショッピングを楽しみながら、映画館へと歩きました。
熱帯夜・・・になりそうな空気が、胸元の深く開いたフリルのブラウスにまでまとわりつくようでした。デシンとレースでつくられた黒のブラウスとスカートに、藤色のニットジャケットがこの日の装いでした。
インナーは藤色のサテンに黒のレースでトリミングをした・・・そう、少し娼婦のようなデザインのセットだったのです。
ハーフカップのブラは、Gカップのわたくしの乳房を押し上げ、フェミニンなフリルの襟元に深い谷間を作っておりました。ガーターベルトも、キャミソールも・・・柔らかいスカートの素材にラインが響くのがいやで選んだTバックも・・・揃いのデザインです。
藤色のガーターベルトの留め具の先には極薄の黒のストッキングが留めつけられていたのです。足元は、バックストラップのパンプスでした。
フェミニンなのにセクシーなファッションは、その日のプレゼンテーションのコンセプト<Cool Black>をイメージしたものだったのです。

映画館は5階にありました。
わたくしが数時間前に手にした1枚のチケットは、昔風の切符を半分に切る形のものでした。
いまでは全席指定で大振りなチケットを発行する映画館が多い中で、その少しレトロなしかけさえ好感がもてたのです。
開場時間21:10と整理番号003が、刻印されておりました。
到着したのは21:00。
まだ、前の回の映画が上映中でしたがすでにロビーへの入場は許されておりました。係員の女性の言葉に従って、入って左手の扉の前で入場までのわずかな時間をリーフレットを手に過ごしたのです。
R−18指定、そしてレイトショー上映。
なのに、小さなロビーには想像していた以上のお客様が集まっておりました。お二人連れでいらしている方もありましたが、1人で作品を楽しみにやってきたという風情の40代を超えた大人の男女の姿も目についたのです。

 
「開場させていただきます。お手元のチケットの整理番号001番から順に5名様づつご案内いたします。お1人様1枚ずつチケットをお持ちになりお待ちください。」 小柄な女性のスタッフの声に、わたくしはバッグと小さなチケットを手に立ち上がったのです。
一番最初に入場した5名は、わたくしも含め会場の奥の方・・・上段に当たる席へと向かいました。
単館の洗練された作品を上演するミニシアターとして定着しているこの映画館は、客席は140席ほどでしょうか。わたくしは1階の最上段、中央ブロックの左から2席目<I-5>席を選んだのです。
上映まであと8分。次々とお客様は入場してまいります。
それでもこのレイトショーのお客様は、140席では広すぎるほどしかいらっしゃいませんでした。
「奥の席、よろしいですか?」 最後の入場者の整理番号のアナウンスが聞こえた時、中背の男性がわたくしに声をかけられたのです。細身の身体からは想像できないほどに柔らかく丸い・・・良く通る声の方だったのです。
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