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祥子の少しはしたなくていけない妄想を綴りました 大人の方だけご覧になってください
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プロフィール
HN:
祥子
年齢:
61
性別:
女性
誕生日:
1962/12/28
職業:
フリーデザイナー
趣味:
美味しい珈琲 クラシックの流れるお気に入りの喫茶店 読書 ジャズ ミュージカル お酒 声が魅力的で背の高い男性♪
自己紹介:
寂しがりやの甘えたです。
ぽちゃ、色白、黒髪のストレートロングヘア、お胸はGカップ、眼鏡をしています。真面目そうな感じだって良く言われます。
声は美人かも♪
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23 2007 / 01
「ああ、うちの母はここらへんのものは買ってきていたみたいだからな。」
栗を2/3ほど、きんとんの中に混ぜ込みます。
「あまり甘いものはお好きじゃありませんでしたか?」
「よくそう言われるが、実は好きなんだ。でもさすがにこの鍋の中身は二人分には多そうだな。」
「ふふふ、そうかもしれませんね。」
煮たのはさつまいも1本分でした。でも、立派な大きさのそのお芋からは結構な量の栗きんとんが出来上がっていたのです。
「なにか器に半分ほど詰めてくれないか?」
「はい、構いませんけれど。どうなさるの。」
「白雪のグルーミングのお礼に持って行こう。」
「えっ、他所のお家に。」
「いや、さっき白雪を預かってくれた奥さんが、今年はきんとんを買い損なったっていう話をしていたからな。こんなに旨そうなものなら喜ぶだろう。」
「味見をしてくださらない?」
まだ一度もお会いしたことのない方の家に・・・・。突然の高梨さんの申し出にわたくしはびっくりいたしました。どんな方にも好まれるお味だと自惚れるほどには、腕があるわけではないんですもの。
「祥子が確かめた味なんだろう。」
「ええ。」
「だったらそれでいい。頼む。」

確かにこのままの量を二人で食べきれるかといえば・・・難しいかもしれません。
「わかりました。ちょっと待っていてください。」
わたくしは、背後にある食器棚から白地の深い小鉢を2つ取り出しました。
器を濯いで・・・そこに、いま作りたてのきんとんを盛りつけたのです。
中高になるようにこんもりと、続いて混ぜ込むことのなかった栗をアクセントになるように表面に数個並べました。
それから、薄紅に色づけをした花びら型の百合根をその上に散らしていったのです。
「ほお、ここに使うためのものだったんだね。」
「ええ、ちょっとした添え物なだけですが。」
「いやいいよ。まるで和菓子のようだ。」
カシャ・・ カシャ・・・
今度は調理台の上に二つ並んだ器までフィルムに収めるのです。もう、交換したフィルムは4本目になります。
「恥ずかしいわ、もう。」
「祥子の手は綺麗だね。爪はきちんと摘まれているし、マニキュアをしているわけでもない。女性としては少し大きいくらいだろう。」
「ええ、もう・・・手のアップなんて。」
そうでした。わたくしは身長も女性としては高い方でしたが、同時に手足もすんなりと大きかったのです。若い頃は、時として男性よりも大きな手がコンプレックスだったこともありました。
カシャ・・ カシャ・・・
「いや、こういっては失礼だがね、なまじなモデルの手より数段若くて女らしい。関節がごつごつと主張することもない。カメラから見ると指に関節なんかないんじゃないかと思うくらいだ。こんなにまめに水仕事をしているのに、荒れてもいない。冷たい水を通すとすっと白くなって・・それから指先だけが紅色に染まる。そしてね、佇まいが本当に綺麗なんだ。いつも指先まで神経が通っている様に、綺麗な型になっている。」
器の1つにラップをし引き出しにあった小布で包んだものを高梨さんに差し出したのです。
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22 2007 / 01
「嬉しいよ、そんなに僕のことを心配してくれて。ありがとう。」
ちゅっ・・・ タオルに添えたわたくしの手を振りほどくこともなく、高梨さんは長身をかがめる様にして、頬に1つキスをしてくださったのです。
「あの・・白雪はどうなさったの。」
今日こちらに来てからの、高梨さんの甘やかな仕草にわたくしはほんの少し戸惑いながら、高梨さんの手を包んだタオルを解きました。そして、このままキッチンでの情事が始まってしまわないようにとさりげなく話題を変えたのです。
「ああ、白雪の兄弟のいる家で遊んでるよ。」
カシャ・・
高梨さんはさっそくカメラを手にすると、ピンクに染まった百合根のようなわたくしの耳朶にレンズを向けたのです。
わたくしはカメラを見る事なく、黄金色に煮上がったさつまいもの裏ごしをはじめました。
「サモエドのブリーダーの方がお近くにお住まいなんですか?」
「そうなんだ。丁度道の反対側にある家なんだけどね。僕がここを空けることが多いからそういう時は白雪を預かってもらっている。」
「よかったわ。」
カシャ・・
高梨さんを見上げた瞬間、シャッターが押されました。
「良かった? いま、白雪がいないことがかい。」
「もう、何をおっしゃってるの。違います。高梨さんは一年の半分くらいはこちらにいらっしゃらないでしょう。その間白雪はどうしているのかと、思っていたんです。ブリーダーの方のところで、兄弟一緒に過ごしていれば寂しくなくてよかったわ。」
「ははは、なんだ今僕と二人きりになれてよかったっていう意味じゃなかったわけだ。」
「しりません。」
まるで、夫婦二人きりの昼下がりにやんちゃな息子が友達の家に遊びに行っていて・・・だからこうして甘い時間が過ごせるだろう、高梨さんの言葉にはそんなニュアンスが含まれていたのです。
いつものヒルズの高梨さんのお部屋なら、このまま全てを放り出して甘えても、美味しいディナーを堪能する手段はいくらでもあります。
でも、いまここで手を止めたらふたりのこれから3日間のお夕食は台無しになってしまいます。
それを解っていらしてこんな悪戯を仕掛けられているのにわたくしは気づいていました。

「白雪をお迎えに行かれるんでしょう。」
「ああ、済めば電話が来る事になっている。」
「済めば?」
「ああ、グルーミングしてくれるそうだ。サモエドは防寒のために毛が密に生えているからね。風邪をひかないように暖かな部屋で完全に乾かしたら電話を貰う事にしてある。」
手元のボウルには、裏ごしされたきんとんがふんわりと黄金色の山を作っておりました。木杓子でかき混ぜて、ほんの少しだけ滑らかさを出すために栗の蜜煮の蜜を加えます。
「栗きんとんを作るプロセスを初めて見たな。」
「そうでしたか。」
21 2007 / 01
「1つだけお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「ああ。」
「囲炉裏の煮物を見て頂けませんか?お出しが上に乗せた昆布に掛かっていなかったら、もう火から下ろしていただきたいんですの。」
おやすい御用だよ、そういって囲炉裏に近寄られます。
大柄な高梨さんだと本当に数歩の距離でした。
お願いをしたまま、わたくしはくちなしの実で美しく黄色に染まった栗きんとんのためのサツマイモの煮え具合を竹串で確かめておりました。すっと通った竹串を引き抜いて唇に当てて火の通りを確認します。
「これは、旨そうだな。」
「なんていうことのないお野菜の焚き合わせです。今日はお時間がなかったので、いくつかは一緒煮にしたんです。お出しの具合はいかがですか?」
お鍋の中には里芋・蓮根・人参が入っていました。筍と手綱こんにゃくは別のお出しですでに煮含めてありました。
「もういいころだろう。下げればいいのかな。」
「はい、こちらにお持ちいただけますか?」
「おう。」
そうおっしゃるなり、高梨さんは鍋の蓋を閉じてそのまま鍋の手を掴みました。

いくら手元に火が当たっていないとはいえ、長時間煮続けていたお鍋です。
「あぁっ・・・そのまま持ったらだめ、熱いわ。」
「ははは、これくらいは大丈夫だよ。」
その言葉通り、高梨さんは大振りな両手鍋を持ち上げたのです。
熱いそぶりも見せません。
「どこに置けばいいのかな?」
「そこの隅にお願い出来ますか。」
先ほどの酢蓮の場所とは少し離れたところに、煮物鍋を置くための厚めに新聞紙を敷いたコーナーを作っておきました。
すでにそこにある3つほどのお鍋のその並びに、高梨さんは焚き合わせの鍋を並べたのです。

「ありがとうございます。ね、手を見せて。」
わたくしは、高梨さんの手を取って冷たい水で絞ったタオルで指先を包んだのです。
「大丈夫だ。手の皮はしっかり厚いからな。」
「もう、シャッターを押す大事な手を火傷なんかなさったら・・・困ります。」
見た感じ、火傷はしていないようでした。
でも、わたくしよりも幾分高い高梨さんの体温のせいでしょうか。指先を包んだ冷たいタオルは瞬く間に次第に人肌へと変わってゆくのです。
「本当に大丈夫だよ。祥子は、心配性だな。」
「だって・・・。」
「いまの祥子の顔を写真に撮っておきたかったよ。」
「ん・・いじわる。」
良く熱い食べ物が苦手な方を猫舌といいます。
わたくしは、猫手でした。
主婦として十数年台所仕事をこなしていても、指先の感覚は鈍くなる事などなくて、いつもお鍋の手を取ろうとしてアチっ・・と声を上げてしまったいたのです。
きっと先ほどのお鍋も、わたくしの手ではあんな風に持てなかったでしょう。
自分だけの感覚で、心配しすぎてしまったことが急に恥ずかしくなって、わたくしは高梨さんの前で拗ねてみせるしかありませんでした。
20 2007 / 01
カシャ・・・カシャ・・カシャ・・・カシャ・・
顔を上げて微笑んで、そうお声を掛ける間すらシャッター音は止まりませんでした。
「恥ずかしいわ、そんなに。」
濡れたままの指先で、俯き続けていたせいで少し下がった眼鏡をきちんと掛け直すまで高梨さんはカメラを下げませんでした。
「割烹着なんて久しぶりに見たよ。似合うね。」
「よくご存知ね。」
「ああ、ここに住んでいた祖母が良く着ていたからね。」
さきほどお食事したダイニングテーブルに重そうなカメラを置いた高梨さんの口から、割烹着なんて言葉が出るとは思いませんでした。
「いまは、ほとんどの方が使われてもエプロンでしょう。わたくしも普段に軽くお料理するときは、エプロンをしないこともあるんですよ。」
そうお話しながらも、手元はさくさくと動いておりました。
「それじゃ、どうして今日は割烹着だったんだい。」
「実は一番機能的だからなんです。」

あく抜きのためさっと酢水に放し、数分後、水気を拭き取って煮立った蜜の中へ百合根の花びらを入れてゆきます。ほんの数分で美味しくゆであがるはずです。薄いピンク色に染めるために、今日は最後に数滴食紅を垂らしました。
濃度のある蜜の中を糸の様に流れてゆく紅の筋があっという間に広がって薄紅に染まってゆくのです。
わたくしは、火を止めて調理台に置いた絞ったふきんの上にその鍋を置きました。
「ほう、そんなもの家にあったかな。」
「いいえ、もしかしたらと持って来てみたんです。」
「ははは・・やっぱりね。ちょっとしたことだが、きれいなものだ。」
プロのフォトグラファーとしての色彩感覚ゆえでしょうか。
アイランド型のキッチンの、少し高くなったカウンターに手をついて高梨さんは飽きることがないようにわたくしの手元を覗き込んでいました。
今度は二つの鍋を並べて、右に薄い酢水に漬けた蓮根を火にかけ、左にマリネ液の元をあたためます。手元には塩でほんの少し殺して赤みを増した人参が竹ざるに上がっています。蓮根が煮上がれば、熱したマリネ液の中にともに浸して冷めるまで待てば出来上がりです。今日は大人二人のためのものですから、一緒に鷹の爪も1つ入れる事にしましょう。
「台所仕事なんて、ご覧になっていても退屈でしょう?」
「いいや、なんか手伝えるかと思ったが、あまり手際がいいんでちょっと手出しできないでいる。」
「ふふふ、お上手ね。ちゃんと習ったわけではないからあまり期待しないでくださいな。」
「謙遜だね。手つきを見ればだいたいわかる。きちんとした仕事のできる人間の手つきはまるで書を書くみたいに無駄がなくて、美しいものさ。」
「もう、そんな風に言っていただいたら、召し上がっていただいた時にすごくがっかりされてしまいそうでこわいわ。」
「いい写真が撮れた時はね、シャッターを押した瞬間に解るんだ。現像して紙焼きして引き延ばすまで待たなくても、解る。祥子さんの手つきはそんな感じだよ。」
くっきりとした太い眉の下の鋭いまなざしを和らげて、高梨さんはそうおっしゃいました。
「それじゃ、気分だけでもご馳走のつもりでいてくださいな。」
手元の蓮根をざるに上げ丁寧に水を切ってから冷めないうちに器に入れたマリネ液に移します。人参を入れて、鷹の爪を入れて・・・きちんと蓋をした器はキッチンの一番涼しい片隅に新聞紙を敷いたコーナーに並べます。
19 2007 / 01
「じゃ、あとは任せる。ちょっと白雪の散歩に行ってくるよ。」
「・・・はい。」
あら、撮影は? この方のことです。すぐに始められるとばかり思っておりました。
テーブルの向こうから伸びた大きな手が、わたくしの頬をなぞります。
「急がないよ。それに、僕がいないほうが気が楽に作業できるだろう。携帯は持っていくから、解らない時は電話をして。好きな様にしていてくれ。3日間は、僕のものなんだろう。」
「ええ。」
立ち上がり、高梨さんが選ばれた先ほどよりも厚手のコートを背後から着せかけて差し上げました。
扉一枚あけるだけで、すっと気温が下がるのがわかります。
「リビングは暖かいからね。そこにおいで。」
「はい。いってらっしゃい。」
「ああ。」
ちゅっ・・・ 玄関までお見送りをしたわたくしの唇に、まるで新婚の夫のようなキスをして、高梨さんはリードを手に白雪の待つお散歩に出掛けました。

わ・わん・わん・・・ はしゃぐ白雪の声が聞こえます。
次第に遠ざかってゆく鳴き声を聞きながら、わたくしは髪を束ねてからキッチンに向かいました。
キッチンは、広く、男性のお1人のものにしてはとても整理されていました。
1年の1/3は日本にいらっしゃらないはずなのに、高梨さんご自身がとても台所仕事がお好きかまめな方なのでしょう。
遠慮なく冷蔵庫を開けさせていただいて、用意してある素材をチェックしたのです。
牛肉のブロックが2種類、鶏肉、鴨肉、そして豚肉。
お魚はまぐろが3種類、鰤、かれい、きんめだい、いか、たこはお正月らしく紅色に酢締めされたもの。ぷりぷりとした生の筋子、それにもうお米のとぎ汁に漬けこまれている数の子、おいしそうなするめいかはまるのまま。
するめに昆布も3種類、ごまめ、かんぴょう、海苔・・・野菜は地のものを中心に一部彩りの京野菜やくわいまで用意されていました。
そして生蕎麦、角餅、かまぼこ、チーズ、黒豆・・・。
およそ、あとは技術さえあればいくらでもフルコースのおせち料理が準備できそうでした。
オーダーは、和食でした。
取り急ぎ下準備の必要なものから手がけるしかないでしょう。
3日間の大まかなメニューを決めて、まずはいかの塩辛づくりからはじめました。

お料理はほとんどが前もっての段取りが決めてです。
お野菜は洗って包丁を入れて・・・大鍋でお出しをとったり、乾物を浸したりとひとりきりの気軽さもあってお料理は少しずつですが整えられてゆきました。
含め煮の必要なお野菜は、炭のいろりに任せてあります。
今夜のための鴨ロースの酒蒸しの段取りを終えたところで、わたくしは明日の祝い膳のための飾り切りを始めたのです。
酢蓮のために、蓮根を花形に剥き、今日人参を薄い梅花剥きにします。
いかはウニをみりんで融いたたれを塗って炙る為に、松かさになるように包丁を入れると美しいですし、美味しく召し上がっていただけます。
カシャッ・・ シャッター音に気づいたのは、百合根を桜の花びらの形に飾り切りをしていた時でした。
「おかえりなさい。ごめんなさい、気づかなくて。」
囲炉裏の側の引き戸の所に、NIKON F6を構えた高梨さんがいらっしゃいました。
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